研究課題
本研究は英語学習者のテキスト読解を対象とし、詳細な情報を要約してメインアイディアを理解する帰納的なプロセスや、メインアイディアの内容をより詳細な個々の情報の理解に適用していく演繹的なプロセスの検証を目的としている。平成28年度までの研究により,英語学習者のメインアイディア理解プロセスが,取り組む課題によって異なる可能性が示唆された。そこで,平成29年度は,メインアイディア理解に読み手の注意を向ける教育的介入の効果を検証した。1つ目の研究ではアウトライン作成の読解教示を与える効果を検証した。実験では,日本人大学生・院生が理解のためにテキストを読解する通常条件と,アウトライン作成の準備をするために読解を行う教示が与えられる条件を設けた。読解中は各文の処理時間を測定し,読解後はテキストの理解内容を思い出す再生課題を行った。しかし,読解教示がメインアイディア理解に与える顕著な効果は見られず,英語学習者の認知プロセスを変化させるのに,読解教示では介入の程度が不足していた可能性が示唆された。2つ目の研究では,英語学習者がタスクに取り組みながら読解することの効果を検証した。実験では通常条件と,アウトラインを作成しながら読解を行うタスク条件を設けた。協力者は読解中に考えていることを口頭で報告し,読解後は再生課題が行われた。その結果,英文読解熟達度が高い協力者では,通常条件と比べてタスク条件において,パラグラフのメインアイディアと文章全体のメインアイディアを結び付けるマクロ志向の理解が見られた。以上の結果から,読解教示では英語学習者にとって介入の程度が十分ではない場合もあることが示された。一方,読解タスクの効果は熟達度が高い学習者では見られたが,熟達度が低い学習者にとっては認知負荷が高かった可能性も示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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