研究課題/領域番号 |
15J01326
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高橋 康史 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
キーワード | 犯罪加害者家族 / スティグマ / 回復 / エンパワメント / 自己物語 |
研究実績の概要 |
本研究では、犯罪加害者家族の日常生活に影響を与える社会的要因を、現代の日本的特徴に注目しながら明らかにすることを目的としている。また、家族自身の社会的属性が日常生活に影響を与えるという「属性仮説」を設定し、以下の2つの方法で研究を進めてきた。以上のような研究の取り組みによって、犯罪加害者家族の日常生活は、「事件発生前に普通の生活経験をもつ」あるいは「他のマイノリティ性を有していない」という社会的要因によって、ネガティヴな作用がもたらされることが明らかになりつつある。 第1に、「属性仮説」を検討するにあたって、社会福祉学・社会学・犯罪学に関連する文献を整理し、問題意識を明確にした。第2に、質的調査を実施した。具体的には、7人の家族および2人の犯罪者本人へのインタビュ―調査を実施分析した。また、加害者家族の自助グループ、加害者への支援団体など複数の支援団体において参与観察を行った。そして、国際的な視点から加害者家族の問題を捉えるために、韓国・児童福祉実践会セウム研究所における犯罪加害者家族支援の現場視察を行うとともに,政策セミナーに参加した。 本研究の意義は、生きづらさを抱えながらもこれまで支援を得ることができなかった犯罪加害者家族の回復に寄与する点に見出される。また、社会福祉領域においては「支援を拒む人にいかにしてアプローチするのか」が重要な課題である。これまでの研究で、加害者家族は、社会関係から自発的に撤退することが明らかにされてきた。したがって、本研究は上記の社会福祉の課題にも貢献するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、おおむね順調に進展している。その理由は、次の2つの点があげられる。 1つ目は、7人の家族および2人の犯罪者本人へのインタビュー調査を実施したからである。ただし、当初の計画では10人の家族へのインタビュー調査を目標にしていたため、インタビュー協力者をさらに募る必要もあると考えている。 2つ目は、研究成果の公表を行なったからである。これまで実施したインタビュー調査をもとにした論文が、『犯罪社会学研究』に掲載された。また、実施したインタビュー調査をもとにした研究報告を日本犯罪社会学会でおこなった。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の取り組みによって、犯罪加害者家族の日常生活は、「事件発生前に普通の生活経験をもつ」あるいは「他のマイノリティ性を有していない」という社会的要因によって、ネガティヴな作用がもたらされることが明らかになりつつある。今後は、以上の点を実証的に分析を進める予定である。 また、家族役割および家族らが属する準拠集団が,家族らの生活に影響を与えるという仮説が浮かびあがりつつあるため、次年度はその点も踏まえながら、研究を進めていく予定である。
|