本研究では、航空機における型式証明のコスト低減を目的とした、複合材料航空機部材の計算機援用仮想試験へ向け、高精度かつ汎用性の高い数値解析手法開発に取り組んだ。特に、複合材料航空機構造の設計上の不確定要素となる、面外負荷時の内部損傷、微視構造に依存する初期損傷発生といった問題に着目し、下記のテーマに取り組んだ。 (i)巨視的解析と微視的解析を組み合わせたスケール横断型の解析手法の構築 (ii)巨視的解析への拡張有限要素法(XFEM)の導入 これらを組み合わせることで、スケール横断型かつメッシュフリーにき裂予測が可能な新しい数値解析手法を実現した。昨年度までにスケール横断型解析手法の枠組みの構築、巨視的解析に適用するXFEMプログラム開発が終了したため、最終年度は開発ツールの検証に取り組んだ。具体的には、面内負荷試験、面外負荷試験を対象とした検証解析をあらゆる材料種で実施し、提案手法の従来手法に対する優位性を検証した。 まずは面内負荷状態での解析精度検証として、炭素繊維強化複合材料の実用強度評価によく用いられる円孔材引張・圧縮試験、さらに面外負荷状態での検証として面外押し込み試験を航空機用途CFRPに対して実施し、各負荷条件での損傷進展過程を詳細に観察した。また、それぞれについて提案手法を用いた損傷進展解析、強度予測解析を実施した。両解析において、微視解析により得られた知見に基づいて改良した破壊モデルを導入した。解析結果はいずれの負荷条件においても実験結果と非常によく一致しており、提案手法の有用性が示された。パラメータの調整などを要することなく、様々な負荷条件で高精度な損傷・強度評価が可能であるという本成果により、将来的な「計算機援用仮想試験」の実現へ向け、一定の目途が立ったと考えられる。 今年度、該当研究の研究成果は、国際誌3編、国際学会2件、国内学会2件にて発表済みである。
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