研究課題
NEAT1長鎖noncoding RNAが細胞から抽出されにくい性質(難溶性)の原因を解明するために、前年度に様々なタンパク質をヒト細胞株においてノックアウトした結果、NEAT1の難溶性に大きく寄与するタンパク質として、NEAT1結合タンパク質であるFUSを同定していた。本年度は、FUSのタンパク質間相互作用を担うPrion-like domainがNEAT1の難溶性を引き起こすことを明らかにした。この結果より、核内ボディを構築する駆動力であるRNA-タンパク質間相互作用とタンパク質-タンパク質間相互作用が、RNAの難溶性の原因でもあると考えられ、核内ボディを構築するArchitectural RNAを探索する上で難溶性RNAに着目することの有用性が強く示唆された。新しいArchitectural RNAを同定することを目的として、HeLa細胞の難溶性RNAを次世代シーケンス解析により探索した結果、前年度には3種類の新規難溶性RNAとそれらRNAの核内顆粒様の局在を見出していた。本年度にシーケンス結果をより詳細に再解析した結果、さらに6種類の新規難溶性RNAを同定し、これら6種類の新規難溶性RNAも核内顆粒様の局在を示すことを明らかにした。また、新規難溶性RNAに関して、転写阻害時に難溶性が失われること、既知の核内顆粒と局在が重ならないこと、顆粒は転写部位のみならずその周辺にも存在すること、一部の新規難溶性RNAはNEAT1と同様にその難溶性がFUSに依存すること、スプライシングを受けないことと難溶性のつながりも見出している。
1: 当初の計画以上に進展している
特別研究員の研究課題で得られた成果をEMBO Journalに論文投稿し、2017年3月10日(ドイツ時間で3月9日)に受理された。また上記の研究内容に関して、国際学会(Keystone Symposia)で口頭発表を行い、国際RNA学会年会と第7回IGM研究交流会でのポスター発表に対してそれぞれPoster Awardと最優秀ポスター発表賞を受賞した。さらに、共同研究の成果がJ Cell Biol及びPLoS Biolに掲載された。
これまでに本研究課題で確立した、RNAの難溶性に着目する手法を用いて、様々なストレス条件下の細胞、疾患細胞、分化細胞におけるArchitectural RNAの探索を計画している。また、難溶性とは異なる角度からも、Architectural RNAを探索する方法を立ち上げることを計画している。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
The EMBO Journal
巻: - ページ: 印刷中
10.15252/embj.201695848
Journal of Cell Biology
巻: 214 ページ: 817-830
10.1083/jcb.201601071
PLoS Biology
巻: - ページ: e1002557
10.1371/journal.pbio.1002557