研究実績の概要 |
昨年度までの研究から、核内構造体を構築するアーキテクチュラルRNAの候補の探索には難溶性RNAの同定が有効であることを明らかにした。この成果は2017年5月15日にEMBO Journalに掲載された。その後、論文で報告した新しい難溶性RNAが構成する構造体について、その構造体形成に関与するタンパク質を探した。その結果、パラスペックルの形成に必要なある複合体が着目している新規長鎖noncoding RNAの構造体形成にも必要であることを見出した。この結果より、この複合体が様々なアーキテクチュラルRNAによる構造体形成に共通して関与することが支持された。また、難溶性の長鎖noncoding RNAが作る複数の新規構造体は、タンパク質間の疎水性相互作用を阻害する処理により、細かく分離した。この結果より、これら難溶性RNAが作る新規核内構造体は、タンパク質間の疎水性相互作用に依存して複数のRNA-タンパク複合体が集まって作られていると考えられる。様々な真核生物種における既知の6種類のアーキテクチュラルRNAは、いずれも細胞がストレスにさらされた時や特定の発生段階で発現して機能を発揮することが明らかにされている(Chujo et al., Molecules and Cells (2017))。また、ヒトには2万種類以上の機能未知ncRNAが存在する。これらの知見から、ストレスに応答して発現する新たなアーキテクチュラルRNAが存在することが期待される。そこで、ストレス下等に発現する新たなアーキテクチュラルRNAを同定するために、様々なストレスを与えた細胞や疾患モデル細胞における難溶性RNAを同定しようと考えた。このために必要な多サンプルの次世代シーケンス解析を実現するために、本研究の成果を基にして所属研究室が新学術領域先進ゲノム支援に申請して採用され、26種類のRNAサンプルの次世代シーケンス解析を依頼し、その結果を待っている状況である。
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