研究課題/領域番号 |
15J01481
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
許 斌 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 単層カーボンナノチューブ / カイラリティ制御 / パルスプラズマ / 触媒前処理 |
研究実績の概要 |
三年計画の初年度において,カイラリティ制御単層カーボンナノチューブ(SWNTs)合成実現に向け,パルスプラズマ中SWNTs成長機構の解明とカイラリティ分布における触媒前処理効果に関する研究を行った. 1.パルスプラズマCVD中SWNTsの合成機構解明 これまでの研究により,短時間プラズマ照射を繰り返し行うパルスプラズマCVDにおいて比較的カイラリティ分布狭いSWNTsを合成することに成功したが,その詳細な成長機構は解明されていない.そこでパルスプラズマCVD中SWNTsの成長メカニズム解明に関する実験を行った.異なるパルス回数下で原子間力顕微鏡(AFM)を用いてSWNTsの長さ分布を測定したところ,パルス回数を増加すると,SWNTsの長さ分布が長尺方向へシフトすることが判明した. この結果から,SWNTsの成長は各パルスで完結せず,パルス照射ごとに成長を継続することが明らかとなった.つまり,成長初期の狭いカイラリティ分布を維持したまま各SWNTsが軸方向へ成長し,最終的にカイラリティ分布の狭いSWNTsが合成されたと言える.この原理に従い今後合成条件を最適化することで,カイラリティ分布の狭いSWNTsの大量合成が可能であると期待される. 2.カイラリティ分布に与える触媒前処理効果 SWNTsのカイラリティを制御するには,上記のプラズマ条件最適化に加え成長触媒の制御も重要である.そこで,今年度は触媒に対して様々な前処理を施すことで,合成されるSWNTsのカイラリティ分布に与える影響を明らかにする研究を行った.触媒前処理として,真空中に様々な反応性ガスを微量導入し加熱処理を行った.その結果,特定の組合せの反応性ガスを導入した場合に(6,4)SWNTsの合成割合が大幅に増加することが判明した.更にこれら反応性ガスの導入量を制御することで,合成試料内の(6,4)と(6,5)SWNTsの存在比を制御可能であることも見出した.このような(6,4)SWNTsの優先成長に成功したのは本成果が初めてのものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
独自に開発した触媒前処理プロセスを用いることで, 世界で初めて(6,4)SWNTsの高純度合成に成功している. さらに前処理条件を最適化することで試料内のカイラリティ分布も制御可能であることを実証している. 以上の成果が得られているため,本研究を“当初の計画以上に進展している”と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究により触媒前処理によりSWNTsのカイラリティ分布が大きく変化することを見出している.一方で, 合成されるSWNTsカイラリティ分布に与える直接的な触媒前処理効果に関しては,未だ明らかにされていない.そこで今後は, 触媒前処理によるカイラリティ制御メカニズムの解明を目的に,前処理前後における触媒構造の変化をXPS,TEM,XRDなどを用いて詳細に比較することにより, 前処理による触媒の物理,化学状態の変化とそこから合成されるSWNTsカイラリティとの相関を明らかにする.また,今回合成した高純度な(6,4)SWNTsを用いて半導体デバイスを作成し,高性能な半導体集積デバイスを実現する.
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