今年度では、まず前年度の調査資料をまとめて「次世代育成セミナー」で発表を行った。そこで得られたコメントは博士論文の作成に大いに役立つものだった。 また本研究の研究目的を達成するために、蒙漢民族の通婚、年中行事軸を設けて現地調査を進めた。 民族的境界を越えた通婚の事例から現地の人々がカテゴリーをどのように認識し、カテゴリーの越境に伴う他者認識と自己認識のずれを日常生活の中でいかに調整しているかを描き出す。内モンゴルにおいて蒙漢民族の通婚は、普遍的な社会現象で調査地に限る特殊なケースではないが、牧畜を始めた漢民族の民族アイデンティティ―を考える上では重要な手がかりである。 調査地では、蒙漢民族の年中行事は大いに異なる。同じ日に行う行事もそれぞれ民族の特徴を持つ。年中行事の中で、漢民族の人が行う旧暦の7月15日、8月15日の行事に重心を置いて調査を行った。それは、「7月15日送面人、8月15日殺韃子」(7月15日に小麦粉で人を作って配り、8月15日にモンゴル人を殺す」という行事である。この行事を行うことから漢民族の人のアイデンティティーの複雑性をうかがえることができる。
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