研究課題/領域番号 |
15J01518
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
秦 徳郎 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 近藤効果 / 超伝導接合 / ショット雑音 / メゾスコピック系 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、量子ドット系における多彩な近藤効果の全貌を解明することである。特に、電流ゆらぎ測定を用いて、その非平衡状態での伝導ダイナミクスに注目する。 この目的を達成するために、当該年度において、近藤効果が発現するカーボンナノチューブ量子ドットに超伝導電極(Al)を接合することで、近藤効果・超伝導競合系を対象にした。特に、2重縮退近藤効果(SU(2)近藤効果)と、スピン縮退と軌道縮退の2つが反映された4重縮退に起因した近藤効果(SU(4)近藤効果)に注目した。試料作製にはCVD法および電子線リソグラフィーを用い、測定には希釈冷凍機を使った。 伝導度測定を行った結果、両者の間で全く異なる伝導度の振る舞いを示した。そして、近藤効果に寄与するチャネルの透過率を考えることで解釈できることがわかった。また、伝導度測定に加えて、電流ゆらぎ測定も行いファノ因子を見積もった。その結果、近藤効果・超伝導競合系におけるファノ因子は、通常の超伝導接合系で期待される値よりも大きい値を示すことがわかった。さらに、SU(4)近藤状態はSU(2)よりも、大きいファノ因子を与えることがわかった。これは、近藤効果によって多重アンドレーエフ反射が増大されることを示唆する結果である。 本研究成果について、2016年にドイツで開催された国際会議628. Wihelm and Else heraeus Seminer: Trends in Mesoscopic Superconductivityにて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、近藤効果・超伝導競合系における電流ゆらぎを測定し、半定量的に明らかにしたものである。これは本研究計画どおりの成果である。そして、超伝導体接合系に関する国際会議で口頭発表した。以上のことから、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本成果は近藤温度が超伝導温度より大きい領域を扱った。来年度は近藤温度が超伝導温度より小さい領域を対象にする。この領域では0-pi転移が現れることが期待されており、転移付近で電流ゆらぎがどのように変化するかを明らかにする。
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