研究課題
超新星爆発後に形成される超新星残骸は超新星の元素合成と爆発機構を理解する上で最も重要な観測対象の1つである。本研究では、これら超新星の性質を理解することを目的とし、銀河系内の超新星残骸をX線天文衛星「すざく」を用いて観測研究した。今年度の成果は主に2つある。1つ目は超新星残骸中の爆発噴出物の観測である。超新星残骸は元の星から噴出物(爆発噴出物)と衝撃波で掃き集められた周囲の物質(星間物質)の主に二成分から構成する。しかし、これまでこれら二成分を分離した研究は観測装置の性能の問題で非常に若い天体に限られてきた。私はエネルギー分解能等に優れる「すざく」のX線スペクトルを利用することで、これら二成分の分離を年齢数千年ほどの比較的古い超新星残骸中においても実現した。その結果、爆発噴出物の組成を正確に測定できるようになり、超新星のタイプ(重力崩壊型・Ia型)により生成される重元素量が系統的に異なることを観測的に示した。また、爆発噴出物の電離状態の測定から、重力崩壊型では噴出物内部で対流が起きていることも発見した。2つ目の成果は、超新星残骸における過電離プラズマの起源の解明である。通常、超新星残骸では電子温度(Te)より電離度(電離温度:Tz)の低い電離途上プラズマ(Te > Tz)が観測されることが一般的だが、近年、過電離プラズマ(Te < Tz)というそれらの関係が反転した異常なプラズマが発見されている。過電離の形成過程はこれまで明らかになっていないが、私は過電離の超新星残骸がいずれも分子雲などの濃い星間物質中にあることに着目した。そこで、過電離と分子雲の分布の相関を調べたところ、過電離は分子雲との衝突領域に向かって顕著になる傾向を発見した。さらに、プラズマの電子温度は過電離の顕著な領域でより低くなる。したがって、過電離プラズマは分子雲により熱伝導冷却により発生したと考えられる。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
PASJ
巻: 67 ページ: 16-1, 16-8
10.1093/pasj/psu149
巻: - ページ: -
10.1093/pasj/psv114