研究実績の概要 |
原始星円盤とその母体のエンベロープガスについて、物理構造と化学組成の進化に関する観測的研究を行った。電波望遠鏡を用いた観測データの解析を、以下の若い太陽型 (低質量) 原始星について実施した。解析には主に、Atacama Large Millimeter/submillimeter Arrayによる観測データを用いた。 原始星コアL1527について、CS輝線の速度構造の解析から、この天体のエンベロープの幾何的構造が、従来報告されていた向きと逆向きであることを明らかにした。速度構造の解析のため、3次元の弾道モデルを作成し観測結果と比較した。また、アウトフローキャビティの壁の速度構造が、放物面モデルで再現されることを示した。以上の結果を学術論文として発表した (2015/8/31受理, Oya et al., 2015, ApJ, 812, 59)。 Class 0低質量連星IRAS 16293-2422のSource Aについて、エンベロープガスの落下と回転の運動が、OCSやH2CSの輝線によって捉えられることを示した。上記モデルとの比較から、原始星質量と比角運動量を評価した。このモデルでは、エネルギーと角運動量の保存のため、ガスは近日点 (`遠心力バリア') より内側には落下できない。遠心力バリア付近で複雑な有機分子(COMs)の輝線が強まることと、H2CSの輝線が遠心力バリア内側の円盤成分を捉えることを示し、バリア前後での化学組成の劇的な変化を明らかにした。さらに、エンベロープから円盤にかけてガスの回転温度の変化があることを示した。この結果をAstrophysical Journalに2016/1/28付で投稿した。 原始星コアL483についてCCHやCSの輝線がエンベロープを捉えることを示した。原始星近傍で、この天体では少ないとされているCOMsを検出し、円盤成分の存在が示唆されることを示した。
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