SPring-8にて、Cu(111)面やCu(410)面とエチレン(C2H4)分子との反応を、シンクロトロン放射光を用いたX線光電子分光(XPS)により調べた。2 eV程度の並進エネルギーを持つC2H4分子線を表面温度300 Kの試料に照射すると、どちらの面においてもC2H4分子が脱水素化して表面に炭素種が生成した。表面温度を500 Kおよび773 KにしてC2H4分子線を照射すると、C1sピークのピーク幅が狭くなり、反応性が高くなることがわかった。さらに、C2H4分子線照射後の低速電子線回折(LEED)パターンを調べると、表面温度300 Kおよび500 Kでは照射前に比べてバックグラウンドが高くなるだけであったが、表面温度773 Kではグラフェン生成を示唆するパターンが観測された。さらにC2H4分子の脱水素化反応の閾値を調べると、Cu(111)面では1.8 eV、Cu(410)面では1.2 eV程度という値が得られた。 また、Cu(111)面やCu(410)面、Si(111)面と塩化メチル(CH3Cl)分子との反応を、シンクロトロン放射光を用いたX線光電子分光(XPS)により調べた。1.9 eV程度の並進エネルギーを持つCH3Cl分子線を表面温度300 Kの試料に照射すると、いずれの試料においてもCH3Cl分子の解離反応が起こった。Cu表面とSi表面とでは反応性が異なっており、Cu表面ではCl原子のみが表面に残るのに対し、Si表面では炭素種とCl原子のどちらもが表面に残ることが明らかになった。また、Cu(111)面よりもCu(410)面のほうが反応性が高いことがわかった。さらに、Cu(111)面におけるCH3Cl分子の解離反応の閾値を調べると、1.6 eV程度であった。
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