研究課題
本研究は、X線自由電子レーザーを利用したコヒーレント回折イメージングにより、1マイクロメートル程度の出芽酵母細胞核を「丸ごと」、「ありのまま」の姿で三次元的に可視化することを目的としている。昨年度得られた三次元構造は、有効分解能が約170 nmと低かった。これを高分解能化すべく、3点の高度化を行った。1、「阿修羅」の自動化:昨年度開発を行った、回折パターンから高信頼度で位相回復計算を行うソフトウェア「阿修羅」であるが、一部でユーザーの入力が不可欠な部分があり、自動化が困難となっていた。このアルゴリズムを自動化し、計算資源さえあればほぼ自動で膨大な投影像回復を行うことができるようにした。2、粒子投影像構造精密化手法の開発:二次元投影像が十分高分解能であることが、投影像を組み合わせて高分解能三次元再構成の大前提である。そこで、低分解能の投影像を、焼きなまし法で高分解能化する手法を開発した。3、回折パターンのピックアップ手法の開発:一度の実験で150万程度の十分な強度を持った回折パターンが得られるが、真に良好なデータをここから選び出すには、目で1つ1つ見るほかなく、解析上の律速となっていた。そこで、機械学習を利用し、予め人が目で見た選んだものと似たものを自動で取得することを可能にした。これらの高度化を行った後、出芽酵母細胞核について測定を重ね、前年度の10倍以上の投影像を得た後、高分解能化を行った。更に、電子顕微鏡の単粒子解析で行われている三次元クラス分け手法を用いた。これらの試行錯誤を経た後、得られた三次元構造の最終有効分解能は150 nmであった。10倍に投影像を増やしても大きく改善しない所を見ると、各個体の構造が150 nm分解能程度でしか共通していない可能性が考えられる。構造の多様性をこのような大きさの生体粒子で検討することが出来たのは、本研究が初めてだろう。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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