研究課題
がんの超初期段階を模倣するため、正常上皮細胞層内にごく少数の変異細胞(がん遺伝子Rasの恒常活性化型タンパク質過剰発現細胞など)を生じさせると、変異細胞が正常細胞に囲まれたときにのみ変異細胞が細胞層の頂端側へ排除される様子が観察される。この排除現象は変異細胞単独で培養した場合には起こらないことから、細胞競合現象(二種の細胞が存在した場合に、一方が競合的に排除され、もう一方が競合的に生き残る現象)に分類されると同時に正常上皮細胞に備えられた「変異に対する防御機構」の一種ではないかと提唱されている。しかしながら、このような防御機構の存在にもかかわらず発がんは引き起こされてしまう。細胞競合が発がん防御機構として働くなら、発がんは細胞競合現象から逸脱した細胞によって引き起こされるのだろうか。この現象の発がん防御機構としての側面にはさらなる検証が求められている。本研究では細胞競合マウスモデルを用いた実験により、個体環境レベルでの発がんリスク因子が細胞競合現象に与える影響を検討した。その結果の1つとして、さまざまながんリスク因子として知られる肥満が細胞競合モデルマウスの腸管上皮組織および膵管上皮組織において細胞競合発生頻度を低下させることを示した。また、肥満による慢性炎症および組織内での脂質代謝異常が細胞競合を抑制していることも明らかとした。本研究成果は、外的環境要因が細胞競合に影響を与えることを示唆している。さらに、細胞競合の抑制が発がんにつながるかどうかを調べる目的で、肥満した細胞競合モデルマウスを長期飼育したところ、変異細胞塊の形成が促進された。この結果は、細胞競合現象の発がん防御機構としての側面を支持するものである。本研究員はこれらの研究成果を筆頭筆者として「Cell Reports誌」に報告した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cell reports
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