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2015 年度 実績報告書

多体系ダイナミクスと重力波を通じた修正重力理論の理解と検証

研究課題

研究課題/領域番号 15J01732
研究機関京都大学

研究代表者

山田 慧生  京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2018-03-31
キーワード一般相対論 / 重力波 / 天体力学 / 三体問題
研究実績の概要

本年度は,一般相対論および修正重力理論における多体系ダイナミクスと重力波の理解のために,主に次の研究を行った.
1.任意の質量における一般相対論的三体問題に対する三角平衡解の導出を受けて,この平衡解の線形安定性を調べ,三体が適切な質量比を持つ場合に解が安定であることを示した [K. Yamada, T. Tsuchiya, & H. Asada, Phys. Rev. D 91, 124016 (2015)].
2.一般相対論における球対称静的時空の周りを円運動する粒子は安定な軌道半径に下限がある事実を拡張し,一般相対論だけでなく様々な重力理論における任意の球対称静的時空の周りを円運動する粒子について,安定な軌道半径の下限および上限を調べた.結果として,任意の球対称静的時空に関して臨界安定円軌道となる必要十分条件を導出し,その軌道半径を様々な具体例に対して導出した [T. Ono, T. Suzuki, N. Fushimi, K. Yamada, & H. Asada Europhys. Lett. 111, (2015) 30008].
3.Newton 重力における三体問題の特殊解の一として知られる Lagrange の正三角解は,一般相対論の枠組みにおいては重力波を放出しうることがわかっており,将来的な重力波の観測によって,この三体系から放射された重力波は別の天体からのものと区別出来るだけでなく,三体系の未知パラメターが推定できることが指摘されている.しかし,過去の研究においては,重力波放射に伴う反作用によって三体系の軌道運動がどのように進化するかに言及していなかった.これを受けて,Lagrange の正三角解に重力波放射の反作用の主要項を取り入れて,直接的に運動方程式を解くことによって,軌道進化を調べた.結果として,考慮した反作用は系を崩壊させることなく,連星の場合と同様に軌道半径を減少(周期を増加)させることを示した.この結果はプレプリントとして公開し,査読付きの学術誌に投稿中である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

重力波の直接検出が Advanced LIGO によって世界で初めてなされたことから,重力波を通じた一般相対論の検証の機運が高まっている.本年度の研究1及び3はこれに関連し,三体系の天体ダイナミクスから生じる重力波形を精密に知るための足がかりとなる研究である.特に,三体問題における平衡解に一般相対論的な効果を取り入れて線形安定性と重力波放射に伴う反作用がダイナミクスに与える影響とを議論しており,今後の重力波天文学における応用が期待される.
また,研究2は一般相対論を超えるような修正重力理論も視野に入れて,任意の球対称静的時空の周りの試験粒子の運動を厳密に議論するための手法を議論しており,ブラックホール近傍のような相対論的に強い重力場における天体ダイナミクスの研究への発展が考えられる.

今後の研究の推進方策

これまでの研究に引き続き,一般相対論的な三体系のダイナミクス及び放出される重力波の議論を行う.特に,より現実的な系を取り扱うために離心率を考慮することで円軌道に限定されたこれまでの議論を拡張する.
一方,有力な重力波源であるコンパクト天体からなる連星系を一般相対論的な強い重力場において調べることは,重力波天文学の観点から重要である.また,将来的な重力波宇宙望遠鏡,eLISA など,のターゲットとして,巨大ブラックホールと軽いコンパクト天体からなる連星系(EMRI)があり,この系のダイナミクス及び放出される重力波の議論が急務である.この問題を解析的に扱うための手法としてブラックホール摂動法が有用であるが,必要な巨大ブラックホール近傍における摂動の研究は未だ完成を見ない.
そこで,申請者はブラックホール近傍の 2 次の摂動まで考慮し,十分な精度でこの系からの重力波形を知るために必要なコンパクト天体の軌道を議論する.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Post-Newtonian effects on the stability of the triangular solution in the three-body problem for general masses2015

    • 著者名/発表者名
      Kei Yamada, Takuya Tsuchiya, and Hideki Asada
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 91 ページ: 124016

    • DOI

      http://10.1103/PhysRevD.91.124016

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Application of Sturm's theorem to marginal stable circular orbits of a test body in spherically symmetric and static spacetimes2015

    • 著者名/発表者名
      Toshiaki Ono, Tomohito Suzuki, Naomasa Fushimi, Kei Yamada, and Hideki Asada
    • 雑誌名

      Europhysics Letters

      巻: 111 ページ: 30008

    • DOI

      10.1209/0295-5075/111/30008

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 三体問題における正三角解の重力波放射に伴う非カオス的進化2016

    • 著者名/発表者名
      山田慧生
    • 学会等名
      日本物理学会 第 71 回年次大会
    • 発表場所
      東北学院大学 泉キャンパス(仙台市)
    • 年月日
      2016-03-20
  • [学会発表] 位置天文的連星の軌道決定に対する統計的アプローチ2016

    • 著者名/発表者名
      山田慧生
    • 学会等名
      Nano-JASMINE&小型 JASMINE 合同サイエンスワークショップ
    • 発表場所
      国立天文台三鷹キャンパス(三鷹市)
    • 年月日
      2016-01-27
  • [学会発表] Non-chaotic evolution of Lagrange's orbit due to gravitational radiation reaction2016

    • 著者名/発表者名
      山田慧生
    • 学会等名
      新学術領域「重力波天体」A05 班合同合宿
    • 発表場所
      KKR伊豆長岡千歳荘(伊豆長岡市)
    • 年月日
      2016-01-07
  • [学会発表] Non-chaotic evolution of Lagrange's orbit due to gravitational radiation reaction2015

    • 著者名/発表者名
      山田慧生
    • 学会等名
      理論懇シンポジウム 2015
    • 発表場所
      大阪大学豊中キャンパス(豊中市)
    • 年月日
      2015-12-23
  • [学会発表] Non-chaotic evolution of triangular configuration due to gravitational radiation reaction in the three-body problem2015

    • 著者名/発表者名
      Kei Yamada
    • 学会等名
      The 25th workshop on General Relativity and Gravitation (JGRG25)
    • 発表場所
      京都大学基礎物理学研究所(京都市)
    • 年月日
      2015-12-10
    • 国際学会
  • [学会発表] Non-chaotic evolution of triangular configuration due to gravitational radiation reaction in the three-body problem2015

    • 著者名/発表者名
      Kei Yamada
    • 学会等名
      100 years of curved space time
    • 発表場所
      Austrian Academy of Sciences, Wien, Austria
    • 年月日
      2015-10-05 – 2015-10-07
    • 国際学会
  • [学会発表] Post-Newtonian effects on the stability of the triangular solution in the three-body problem for general masses2015

    • 著者名/発表者名
      Kei Yamada
    • 学会等名
      Fourteenth Marcel Grossmann Meeting (MG14)
    • 発表場所
      University of Rome "La Sapienza", Rome, Italy
    • 年月日
      2015-07-12
    • 国際学会

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公開日: 2016-12-27  

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