研究実績の概要 |
本年度は,一般相対論および修正重力理論における多体系ダイナミクスと重力波の理解のために,主に次の研究を行った. 1.任意の質量における一般相対論的三体問題に対する三角平衡解の導出を受けて,この平衡解の線形安定性を調べ,三体が適切な質量比を持つ場合に解が安定であることを示した [K. Yamada, T. Tsuchiya, & H. Asada, Phys. Rev. D 91, 124016 (2015)]. 2.一般相対論における球対称静的時空の周りを円運動する粒子は安定な軌道半径に下限がある事実を拡張し,一般相対論だけでなく様々な重力理論における任意の球対称静的時空の周りを円運動する粒子について,安定な軌道半径の下限および上限を調べた.結果として,任意の球対称静的時空に関して臨界安定円軌道となる必要十分条件を導出し,その軌道半径を様々な具体例に対して導出した [T. Ono, T. Suzuki, N. Fushimi, K. Yamada, & H. Asada Europhys. Lett. 111, (2015) 30008]. 3.Newton 重力における三体問題の特殊解の一として知られる Lagrange の正三角解は,一般相対論の枠組みにおいては重力波を放出しうることがわかっており,将来的な重力波の観測によって,この三体系から放射された重力波は別の天体からのものと区別出来るだけでなく,三体系の未知パラメターが推定できることが指摘されている.しかし,過去の研究においては,重力波放射に伴う反作用によって三体系の軌道運動がどのように進化するかに言及していなかった.これを受けて,Lagrange の正三角解に重力波放射の反作用の主要項を取り入れて,直接的に運動方程式を解くことによって,軌道進化を調べた.結果として,考慮した反作用は系を崩壊させることなく,連星の場合と同様に軌道半径を減少(周期を増加)させることを示した.この結果はプレプリントとして公開し,査読付きの学術誌に投稿中である.
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