研究実績の概要 |
水星や火星、月などの地球型惑星の外核は主に溶融鉄によって構成され、軽元素(H,C,O,Si,S)が含有した溶融鉄合金であると考えられている。近年における月地震波の再解析から月の核は溶融した層が存在し、その音波の伝搬速度は4100 m/sであるとされている(Weber et al., 2011)。月内部の軽元素を制約するためには鉄―軽元素系の音速測定を行い、これら軽元素の溶融鉄へ与える効果を明らかにする必要性がある。しかし、鉄-軽元素系の音速測定はSのみに限られ、月環境下に適用しうる他軽元素系の報告例はない。したがって、本研究では軽元素の中で炭素に着目し、高温高圧下における溶融鉄合金の音速―密度同時測定を行った。 本研究によりFe-C密度―音速同時測定を3.4 GPa, 1850 Kまでの圧力温度条件で行った。炭素が溶融鉄に含有することにより、純鉄の音速は3 GPa, 1700 Kにて約2%、密度は2 GPa, 1700 Kにて約2%減少する事が明らかとなった。これら得られたデータを基に密度-音速の関係式バーチ則の関係で表したとき、今回得られたFe-3.5wt%Cの線形関係は、圧力や温度変化によって変化しないことが明らかとなった。この傾向を純鉄と比較した結果、炭素の溶融純鉄の線形へ与える効果は圧力と共に小さくなることが明らかとなった。本研究によって得られた成果は学術論文として受理された(Journal of Geophysical Research -Solid Earth, Vol. 121, Issue 11, Pages 7984-7995, DOI: 10.1002/2016JB012968)。
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