研究実績の概要 |
本年度、私は研究課題について様々な視点から研究を進めた。全部で6つの論文を出し、その内4つが既に学術雑誌に掲載されている。以下では、その中でも重要な成果について述べる。 論文[1]では、これまでの研究で得られたColeman理論をより一般化した。その枠組みの中ではいくつかの自然性問題が1つの原理を用いてシンプルに解決できることを見た。様々な問題が1つの原理から解決出来るという結論は素粒子物理学において非常にインパクトがあり、自然の理解にとって本質的である。ただ、定式化の段階で自明でない仮定もしており、それをどう正当化するのかが今後の課題である。 論文[2]では、広いクラスのモデルに対しperturbativityから得られる制限について議論した。少なくとも標準模型においては全てのcouplingがプランクスケールまで摂動的であり、新たにモデルを作る際にもperturbativityをチェックすることは必須となっている。具体的には、標準模型に1つだけスカラー粒子を加えるモデルを考え、結果として粒子のチャージが比較的小さくても摂動論がプランクスケールまで使えないことを示した。より多くのスカラー粒子を加えても定性的な結論は変わらないため、我々の結論は標準模型を超えたモデル一般に対し強い制限を与える。同じ方向性として、最近のLHCの実験結果を説明する現象論的モデルを[3]で考察した。 論文[4]では、宇宙のバリオン数を説明する新しい理論を提案した。これまで提案されてきたバリオン生成モデルに対し、我々のモデルは初期宇宙の温度が低くてもバリオン生成が可能であるという利点があり、この分野において新しい枠組みを提示した。我々の理論は有効理論に基づいているので、具体的なモデルに依らず広く応用が可能である。(文献)[1] PTEP, no.12, 123B03 (2015); [2] Phys. Lett. B 747, 238 (2015); [3] arXiv:1602.04170; [4] arXiv:1510.05186
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