研究実績の概要 |
1.攻撃性と精神的健康の関連(嘉瀬ほか, 2015):攻撃性を含んだより包括的な精神的健康のリスク要因であるタイプA行動様式(以下,タイプAと略記)と,ストレス対処能力である首尾一貫感覚(SOC)が大学生の精神的健康に与える効果を検討した。大学生の調査データを分析した結果,攻撃性はタイプAのなかでも精神的健康に対して強い負の関連を持つ要因であること, SOCは攻撃性が高い場合でも抑うつ傾向を低減する効果を持つことが示唆された。SOCとライフスキルは類似した機能を持つ要因であることから,ライフスキルを高めることで,攻撃性が高い者でも精神的健康の維持や増進が可能となると推察された。 2.ライフスキルにおける性差や個人差(嘉瀬ほか, 2015;嘉瀬ほか, 印刷中):(1) 調査データを分析した結果,ライフフスキルの特徴によって大学生は5つグループに分類され,それぞれのグループの精神的健康の状態は異なることが示された。これらのグループはライフスキルにおける個人差や性差を示すとともに,ライフスキルのトレーニング実施時に考慮すべき差異を示していた。(2) 高いSOCを有する者のライフスキルの特徴を検討した。大学生の調査データを分析した結果,SOCの高い者はライフスキルが高く,より効果的にストレスへ対処し精神的健康を高めるように構造化されたライフスキルを有していることが示唆された。この結果より,ライフスキルの構造化を意識したプログラムの実施が効果的であると示唆された。 3.青年成人に求められるライフスキルの抽出(嘉瀬ほか, 印刷中):測定尺度の作成を目的として,大学生を含む青年や成人に求められるライフスキルを検討した。自由記述調査のデータを分析した結果,中核的・特徴的なライフスキルを示す40の要因が抽出された。これらは現代社会生活に必要な要因であると推察された。
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