本年度は、アコニチンの骨格構築を目的に研究を行った。文献既知の二環性エステルをアルデヒドへと変換後、エノン共存下におけるエチルアミンとの還元的アミノ化を検討した。その結果、ピコリンボラン、Ti(O-iPr)4と塩化亜鉛の組み合わせが有効であり、対応するアミンを良好な収率で与えた。なお、生じたアミンはBocカーバメートとして保護した。次に、Birch還元を用いてエトキシカルボニル基を導入した後、ホルマリンとのaldol反応により第四級炭素を立体選択的に構築した。続いてBoc基を強熱条件により除去した結果、生じた第二級アミンは直ちに環化してラクタムを与えた。続いて、ラクタム窒素α位へ酸素官能基を導入する目的で種々の条件を試みたが、対応するヘミアミナールを得ることは困難であった。一方、ブロモ基を導入する目的でNBSとAIBNを用い反応を試みた結果、望む位置でのブロモ化に続きマンニッヒ型の環化反応が一挙に進行し、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を含む四環性ラクタムが生成していることが明らかとなった。なお、この時点では分離困難な副生成物が含まれていたため、酸処理とジオールの保護を行なった後、四環性ラクタムを二工程収率55%で単離することに成功した。その後、プロパルギルアルコールとの薗頭カップリング、ビニルGrignard試薬を用いる電子環状反応により五環性ジエンを得た。今後、この五環性ジエンと適切なジエノフィルとのDiels-Alder反応によりビシクロ[2.2.2]オクタン環を構築した後、Wagner-Meerwein転位によりアコニチンの全炭素骨格が合成可能になると期待される。
|