本研究は、調製段階での現象も含めて理論計算から包括的に検討を行うことにより、金触媒の機構解明と新規触媒の創成に関する知見を与えることを研究目的としている。 採用1年度(平成27年度)では、金触媒の調製における経験則に理論計算から証明を与えることに成功した。採用2年度(平成28年度)では、採用1年度での結果を考慮したうえで、担体結晶面の差異が金クラスターの電子状態に与える影響、(2)担体結晶形の差異が金触媒の活性に与える影響、(3)他貴金属触媒との比較を理論計算だけでなく実験も行い、詳細に検討した。 一般的な金触媒であるAu/TiO2触媒に関する検討の結果、確認されている3つのAu/TiO2界面のうちAu(111)//TiO2_anatase(112)の相互作用が最も強いこと、金触媒のCO酸化活性においてTiO2の結晶形依存性はほとんど見られないことを見出した。それらの結果をよく説明する妥当な機構を共同研究から示すことに成功し、金触媒の機構解明に大きく貢献した。 また、他貴金属触媒との比較検討を行うことによって、金は他貴金属よりも担体表面上のアニオン種との相互作用が著しく弱いこと、貴金属と酸化物表面の相互作用は化学ポテンシャルだけでは説明ができず化学硬度を導入する必要があること、酸化物表面上へのヨウ素添加は銀や銅クラスターの固定化に効果がある可能性があることを示すことに成功した。これらの結果は、金触媒に限らず、貴金属触媒の新たな設計指針を与えている。
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