本研究は歯周病が脳内に及ぼす影響を直接的かつ時系列で解析することで脳炎症惹起メカニズムを明らかにすることを目的としている。昨年度は、歯周病菌(porphyromonas gingivalis; P.g菌)を脳内に直接注入した際、ミクログリア突起がその周囲に即座に集積することを明らかにした。さらに、菌に対するミクログリア突起の伸展反応は、明期と暗期で優位な差を認め、明期よりも暗期において反応性が増大していた。 また、P.g菌以外の菌に対しても同様の反応性が見られた。さらに、菌に対するミクログリア突起伸展反応はP2Y6受容体により制御されていることを示した。また、ミクログリアと種々の菌を共培養したところ、ミクログリアからのUDPの分泌が確認された。以上の結果から、菌が脳内へ侵入した際、近傍のミクログリアがUDPを分泌し、さらにその周囲のミクログリアがUDPを目印に突起を伸展させ、侵入部位に集積することが示唆され、その反応はミクログリアの内在性時計制御下でP2Y6受容体によって調節されていることがわかった。 本年度は明期と暗期でミクログリアの単離を行い遺伝子発現解析を行った。その結果いくつかの遺伝子の発現に有意な差を認めた。今後はそれらの遺伝子変化に関してさらに解析を行っていく予定である。
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