コヒーレントX線回折イメージング(CXDI)は、マイクロメートルサイズの非結晶粒子丸ごとを数十~数nmの分解能で可視化する構造解析手法である。CXDI実験ではX線を試料に照射して得られる回折強度パターンからX線入射方向に投影した電子密度像を回復する。本研究では、X線自由電子レーザー(XFEL)及び第三世代放射光光源を用いたCXDI実験技術の開発を行っている。本年度の成果を以下2点について報告する。 1. XFEL光源の性質について評価 鮮明な回折強度パターンを得るためには、入射X線光源に高強度かつ高い空間コヒーレンスが要求される。XFEL施設SACLAでは、X線パルスをミラーで集光して、約2x2マイクロメートル四方の集光点領域に10の10乗/パルスもの光子を提供する。1パルスで信号対雑音比の良い回折X線を記録できるが、X線パルスが照射された物質はクーロン爆発を起こして破壊されてしまうため、検出器等の計測器を集光点に設置することはできない。そのため、集光点での空間コヒーレンスが高いか否か評価することは非常に困難であった。そこで、本研究では、一昨年度に開発した試料調整手法及び試料固定照射装置を用いて取得できる金コロイド粒子の回折強度パターンから空間コヒーレンスを1パルスごとに評価する手法を考案した。本手法を用いて、集光点における空間コヒーレンスがほぼ完全であることが明らかとなった。 2. SPring-8におけるCXDIトモグラフィー実験 第三世代放射光施設SPring-8のBL29XULでは試料を回転させながら配向ごとの回折強度パターンを取得し、三次元電子密度分布を回復するCXDIトモグラフィー実験を実施した。本年度は、試料調整手法における条件によって得られる細胞試料の電子密度分布に影響することが明らかとなった。得られた知見より最適な試料調整手法を確立する見通しを得た。
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