本年度は,1)IMP3の機能に関する解析,2)サイクリンB1 mRNAのORF中のシス配列による翻訳制御機構の解析,3)サイクリンB1 mRNAの輸送に関する解析を実施した。 1)については,IMP3のコンディショナルノックアウトゼブラフィッシュの作出を試みたが,変異体を得ることはできなかった。しかし,IMP3の強制発現による卵成熟の遅れがサイクリンB1翻訳の遅れであることを証明することに成功し,IMP3はサイクリンB1 mRNAの新規翻訳抑制タンパク質である可能性を示した。 2)については,実験系を改良することで,シス配列に結合する可能性のある候補タンパク質を数種類得ることに成功した。しかし,候補タンパク質をトランス因子として同定するには至らなかった。トランス因子がシス配列を直接認識する以外の機構も考慮した実験系を組む必要があるように思われる。 3)については,昨年度,サイクリンB1 mRNA結合タンパク質と同定したStaufen1の機能を解析した。その結果,ゼブラフィッシュ卵母細胞におけるサイクリンB1 mRNAの局在化には,Staufen1とKinesin1の作用によってmRNAが微小管の+端に向かって能動輸送されることが重要であることが明らかとなった。この機構は,アフリカツメガエル卵母細胞においてmRNAを植物極へと輸送する機構と類似しているが,輸送方向が逆である。この発見は,脊椎動物卵母細胞におけるmRNA輸送機構の普遍性と多様性を示した重要なものである。
|