研究課題/領域番号 |
15J01870
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
山脇 將賢 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 信用制約 / 体位指標 / 因果関係 / 身体能力 / 人的投資 / 健康 / 教育 / 相関関係 |
研究実績の概要 |
平成28年度の成果は、以下の3点である。まず、教育、健康などの人的投資のアウトカムと様々なインプットとの関係を明らかにした多数の文献を通して、人的投資におけるアウトカムと様々なインプットとの因果関係の全体像を把握したのと同時に、その分析手法を獲得することができた。次に、途上国農村の信用市場に関する多数の文献を通して、途上国農村部の信用市場と人的投資行動との関係をより深く理解することができたのと同時に、以前の研究代表者の研究成果(途上国農村部における多種類の信用機関へのアクセスの有無と健康状態の変数のプラスの相関関係)をより体系的に理解することができた。最後に、平成27年度に完成したデータを通して、様々なアウトカム変数とインプット変数の関係を多数の文献を参考にして分析したのと同時に、信用市場へのアクセスの制限がそれぞれのアウトカム変数にどのような影響を与えるのかを見た。 1点目に関しては、教育、健康の指標それぞれが提供する情報とインプット変数との因果関係を様々な文献を通して学んだ。例えば、栄養摂取量と所得の関係を測定誤差や逆の因果関係などの問題を考慮しながら、固定効果モデルや操作変数法など様々な手法を用いてその因果関係を明らかにしようとする文献を多数読んだ。 2点目に関しては、複数の信用機関それぞれの人的投資行動への影響をより体系的に理解するために、文献を複数読み、経済モデルを通して、インフォーマル信用と人的投資行動との関係を理解することができるようになった。 3点目に関しては、体位データだけでなく、体の機能、病気の有無などのアウトカム変数と医療・薬などへの支出などのインプット変数との関係、それぞれの信用制約との関係を分析した。体位データ以外、有意な結果を得ることができなかったが、係数のプラス・マイナスに関しては、整合的な値であり、今後操作変数などを用いて結果の改善に望む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
健康、教育などの人的投資指標、特に健康への投資行動に関する分析は非常に困難である。計測誤差の問題などに加えて、健康のアウトカムは非常に複雑な形で様々な要因から影響を受けている。例えば、体位(身長、体重など)への影響を分析する際には、年齢によって体位生産関数の形が大きく異なることなどを考慮して分析しなければならない。こういった影響を含め、それぞれの健康アウトカムに影響を与える要素をしっかりと把握した上で分析をする必要がある。そのため、健康のアウトカム変数とインプット変数の関係をその影響経路を含め詳細に分析している文献をしっかりと読む必要があった。 加えて、途上国における信用市場に関する文献はたくさんあるが、その理解に加えて、インフォーマル信用に関する理解を深めなければならなかった。インフォーマル信用は、フォーマル信用に比べて、そのアクセス条件などがより複雑で文献も相対的に少なく、理解するのが難しかった。 本研究において取り扱う被説明変数と関心の対象である信用制約変数、それぞれの変数に関する理解と二つの変数がどういったメカニズムで影響しあうのかを理解するのに時間がかかってしまった。 自身のデータで、できること、できないことのメリハリをつけて、データ制約内で可能なことをしっかりとやるというスタンスで取り組んでいきたい。 平成29年度は、その遅れを取り返すためにも全精力を研究に注ぎたい。8月下旬までに、執筆を完了させたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目的である人的投資のアウトカム変数である教育、健康指標とフォーマル、インフォーマルな複数の信用との関係を明らかにしていくために、以下の方針に従って研究を進めていく。 まず、フォーマル、インフォーマル信用のそれぞれがどういったメカニズムで人的投資のアウトカムに影響を与えるのかをしっかりと把握するために、より詳細な文献を通したリサーチを行う。複数のストーリー候補を考え、それぞれを検証していく。 文献を通したリサーチを参考にしながら、平成28年度において実施したアウトカム変数とインプット変数をベースにして、作成データの中から操作変数の候補を考える。信用の影響を因果関係をはっきりさせて推定するために、それぞれのアウトカム変数に対応した操作変数を見つけなければならない。短期では操作変数として機能する変数も長期では操作変数として機能しなくなってしまう物もあるので、そのこともしっかりと考慮して分析する必要がある。 これらの取り組みと並行して、分析結果を海外にいる教授や周囲の研究員の方々と共有する。そこで得た有益なコメントを参考にしながら修正していき、分析を改善していきたい。 最後に、具体的な研究計画を述べる。4、5月中に文献リサーチ、分析、発表のサイクルを繰り返しながら、研究を進めていく。6月から分析と発表のサイクルに集中するのと同時に、執筆を開始し、8月下旬までに執筆を完成させたい。
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