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2016 年度 実績報告書

新規TGF-β標的因子Tuft1のmTORシグナルにおける機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 15J01875
研究機関東京大学

研究代表者

川﨑 夏実  東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2018-03-31
キーワードTuft1 / mTOR / 小胞輸送 / リソソーム
研究実績の概要

前年度までに、Tuft1はmTORC1シグナルを正に制御する因子であることを突き止めており、引き続き、mTORシグナルの制御メカニズムの詳細を検討している。
1.TUFT1は小胞輸送を制御する
mTORC1活性化の場であるリソソームの細胞内局在を検討した結果、対照細胞においては核周囲に集積するが、Tuft1をノックダウンした細胞においては細胞周辺部に四散した。さらに、初期エンドソームの局在や蛍光標識トランスフェリンの追跡実験の結果もあわせ、Tuft1は小胞輸送の制御因子であることが示唆された。正常な小胞輸送の存在は、mTORC1の活性制御に不可欠だが、その詳細な機序については不明な部分が多い。
本研究ではまずリソソームに絞り、mTORC1活性との関連を検討した。モータータンパク質Kif5bを強制発現は、mTORC1シグナルの抑制を認めた。ダイニン阻害剤を用いた場合でも同様な結果を得た。逆に特異的なRab GTPaseであるRab7aを強制発現させ、Tuft1ノックダウン細胞でmTORC1を核周囲へ再局在化させると、部分的ではあるがmTORC1シグナル活性が回復した。以上のことから、Tuft1のノックダウンによるmTORC1の抑制の一部は、リソソームの局在異常に起因することが示唆された。
2.Tuft1発現と薬剤感受性について
Tuft1発現と薬剤感受性の関係の評価を行った。従来型抗がん剤とPI3K-AKT-mTORシグナルに関連する薬剤に関して、相関解析を行った結果、アルキルリン脂質の経口薬であるperifosine感受性とTuft1の発現量が有意に負の相関を示すことが明らかとなった。Perifosineは多発性骨髄腫および大腸がんにおいて第三相臨床試験に進んだ治験薬であるが、有意差が得られない結果に終わっており、適切な効果予測因子の同定が求められている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度はTuft1がmTORC1シグナルを正に制御するメカニズムを明らかにするという目的で、年間を通して本研究を遂行した。その結果、Tuft1は小胞輸送を制御することを明らかとし、Tuft1のノックダウンによるmTORC1の抑制の一部は、リソソームの局在異常に起因することを示した。
また、Tuft1の臨床応用可能性を探索する目的で、Tuft1発現と薬剤感受性の関係の評価を行った。その結果、アルキルリン脂質の経口薬perifosineに対する感受性と、Tuft1の発現量が有意に負の相関を示すことを見出した。
以上のことから、本年度は、当初の計画通り順調な研究の進展が見られたと判断した。

今後の研究の推進方策

これまでにTuft1は小胞輸送を制御することでmTORC1シグナルを正に制御することを示してきた。次年度は、Tuft1が小胞輸送を制御する機構について、結合タンパク質の探索などにより詳細な解析を進める予定である。
またTuft1の発現量とその感受性が相関する薬剤としてperifosineを同定したが、その作用は多岐に渡るため未解明な部分が多く、この点も今後の重要検討課題である。次年度はTuft1の機能に基づいたperifosineの機能の探索と、Tuft1のバイオマーカーとしての応用可能性について検討したい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] TUFT1 は核周囲への小胞の集積を促進しmTORC1 を活性化する2016

    • 著者名/発表者名
      川崎夏実、磯谷一暢、旦慎吾、矢守隆夫、高野洋志、八尾良司、田口瑠奈、森川真大、野田哲生、江幡正悟、宮園浩平、鯉沼代造
    • 学会等名
      第74回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-10-06 – 2016-10-08
  • [学会発表] TUFT1 activates mTORC1 signaling by orchestrating the vesicle trafficking2016

    • 著者名/発表者名
      Natsumi Kawasaki, Kazunobu Isogaya, Shingo Dan, Takao Yamori, Hiroshi Takano, Ryoji Yao, Yasuyuki Morishita, Luna Taguchi, Masato Morikawa, Carl-Henrik Heldin, Tetsuo Noda, Shogo Ehata, Kohei Miyazono, and Daizo Koinuma
    • 学会等名
      The 15th KICancer Retreat
    • 発表場所
      Djuroenaeset, Sweden
    • 年月日
      2016-09-26 – 2016-09-27
    • 国際学会
  • [学会発表] TUFT1は核周囲へのリソソーム集積を促進しmTORC1活性化を制御する2016

    • 著者名/発表者名
      川崎夏実、旦慎吾、矢守隆夫、江幡 正悟、宮園 浩平、鯉沼 代造
    • 学会等名
      第20回 日本がん分子標的治療学会
    • 発表場所
      別府コンベンションセンター(大分県別府市)
    • 年月日
      2016-05-30 – 2016-06-01

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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