研究実績の概要 |
平成28年度はミクロ取引における「市場の厚み効果」の実証に取り組んだ.この効果はNgai and Tenreyro (2015, AER)において物件数(厚み)の変動と取引確率や成約価格の関係を数理的に記述した理論研究で用いられたものであり,サーチのフレームにおいて厚みがマッチの質に影響するというこの効果が仮定されている.しかしながらこの効果の存在と程度を実証的に明らかにした研究は十分でない.このトピックは平成27年度(採用初年度)のサーベイによって明らかになった研究課題の一つであり,平成28年度は厳密な分析に先立つラフ分析を行った.はじめに東京都区部における賃貸住宅仲介のデータベースから賃貸取引の時点,地点,賃料と当該物件属性のデータセットを整備し,これを用いて市場の厚みとマッチの質の間の関係を定量的に明らかにした.本来この厚み効果は量変数の相関ではなく因果を意味するのものであるが,本年度は量変数の相関関係を記述するにとどまっている.研究成果は第30回応用地域学会神戸大会で口頭発表を行った.
|