研究課題
微小管結合タンパク質tauはアルツハイマー病等多くの神経変性疾患でユビキチン陽性の過剰リン酸化された凝集体が蓄積することが知られている。Tauの凝集過程については、ショウジョウバエを用いた遺伝学的なスクリーニングは行われたものの、哺乳類培養細胞を用いたtauの凝集に関与する因子の包括的なスクリーニングは例がない。これは、tauタンパク質が可溶性の天然変性タンパク質であり、ポリグルタミン伸長タンパク質に似た簡便な凝集モデル細胞が存在しなかったことが一つの原因だと考えられる。ここで、近年tauの微小管結合領域(tau repeat domain; tau RD)を用いた、細胞分裂後もtau RDの凝集体を恒久的に維持する凝集陽性細胞の樹立を報告した。そこで、本研究ではこの凝集陽性細胞を独自に樹立し、ゲノムワイドsiRNAスクリーニングを行うことで、tau RDの凝集に関与する因子の同定を目的とし、Small Ubiquitin-like Modifier 2 (SUMO2)がtau RDの凝集を抑制していることを見出した。近年、SUMO化が多くの神経変性疾患のミスフォールドタンパク質の凝集に関わることが示されているものの、網羅的アプローチからもSUMO化の重要性を確認したのは初めてである。また、過去の報告ではtauはSUMO1修飾を受けることで、ユビキチン化が抑制され、リン酸化が促進されることにより不溶性になるとされていたが、本研究ではSUMO1、SUMO2修飾いずれも可溶性tau RDにのみ観察されたことから、tauのSUMO化の新たな影響が示唆された。本研究より、tau RDはSUMO2修飾されることにより可溶性が保たれることでユビキチン化と不溶性の凝集体形成が抑制されると考えられ、これはtauの凝集が確認される多くの神経変性疾患の治療に貢献しうる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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eLife
巻: 5 ページ: e18357
http://dx.doi.org/10.7554/eLife.18357