研究課題
鳥類は特有な生体構造を持ち、哺乳類には存在しない腎門脈が腎臓に大量の血液を運ぶため、腎臓における化学物質暴露量は多く、腎障害が起こりやすいと考えられる。しかしながら、鳥類において早期の腎障害を反映するバイオマーカーは発見されていない。そこで本研究では、鳥類の新規腎障害マーカーの探索を目的とした。腎障害を引き起こすとされるジクロフェナク、シスプラチンをそれぞれニワトリに投与し、腎障害モデルを作成した。急性腎障害は急性間質性腎炎と急性尿細管壊死の2つに分けられ、ジクロフェナク投与では前者を、シスプラチン投与では後者を引き起こすことが哺乳類において確認されている。本実験での腎臓病理診断の結果、ニワトリにおいても上記の病態を各投与群で確認した。血液検査および各種臓器の病理検査結果から腎臓特異的な障害を持つ個体を判断し、血漿中の糖鎖解析および腎臓組織のマイクロアレイ解析・リアルタイムPCR法を用いて候補マーカーの選出を試みた。糖鎖解析の結果、ジクロフェナク投与群ではシアリル化され、かつフコシル化されていない構造を持つ糖鎖の発現が上昇した。シスプラチン投与群では発現の変動が認められず、障害を引き起こすメカニズムの違いにより、糖鎖発現に違いが現れると考えられた。遺伝子発現を網羅的に分析するマイクロアレイ解析では、ジクロフェナク・シスプラチン投与群に共通して障害度依存的に発現が増加した遺伝子が数種類認められた。マイクロアレイ解析にて腎障害マーカー候補として考えられた数種の遺伝子を対象に、リアルタイムPCR法により定量を行うことで、さらに候補遺伝子を絞り込んだ。リアルタイムPCR法の結果から、ジクロフェナク・シスプラチン両投与群で障害度依存的に発現が増加した遺伝子に注目し、ニワトリにおいて血液中でのタンパク質発現を定量するため、オリジナル抗体を作成しタンパク質の発現解析を進めた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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