研究課題
本研究では,キュウリモザイクウイルス(CMV)に対する抵抗性の強さを制御する新規植物因子を探索した.前年度までに,CMV(Y)系統に対する抵抗性遺伝子RCY1を10コピー有するシロイヌナズナを材料として,9系統のsuppressor of RCY1-mediated resistance to CMV(Y) (src) 変異体を単離し,特徴付けを行なった.9系統は,実質的に類似した表現型を示したため,代表的な5系統の解析について,本年度に原著論文としてまとめて報告した.src変異の形質はエピジェネティックに現れることから,原因変異をマッピングするためには解析母数を極端に増やす必要が考えられ,本年度に作業を完了することが難しいと考えた.そこで本年度は,srcの原因変異の同定には着手せず,逆遺伝学的解析に着手した.具体的には本年度に,RCY1を内因的に有するシロイヌナズナエコタイプC24をバックグラウンドとした,既報のDNAメチル化制御や遺伝子発現制御に関わる因子の変異体を取り寄せ,CMV(Y)抵抗性応答を解析した.DNAの脱メチル化を制御するDNAグリコシラーゼの変異体ros1-1にCMV(Y)を接種したところ,野生型に比べてCMV(Y)抵抗性の強さに差は認められなかった.一方で,RNAポリメラーゼIIのC末端ドメイン脱リン酸化酵素の変異体であるcpl3-1や,翻訳伸長因子の変異体であるlos1-1において,RCY1を介したCMV(Y)抵抗性が亢進していることが見出された.cpl3-1やlos1-1において,RCY1遺伝子の発現量は野生型と比べて変化が認められなかったことから,RCY1下流のシグナル伝達経路に影響が生じていると考えられた.本年度には,以上のようにNB-LRRタンパク質を介したウイルス抵抗性機構を逆遺伝学的に解析する一連の手法について,実験書への寄稿も行った.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Antiviral Resistance in Plants: Methods and Protocols, In Methods in Molecular Biology
巻: in press ページ: in press
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Physiological and Molecular Plant Pathology
巻: 100 ページ: 151~162
10.1016/j.pmpp.2017.09.007