本研究は、研究1:行政広報によるメディア統治モデルの構築と研究2:地域のオピニオンリーダー像の解明を含めた情報ルートの解明を行った。 研究1については先行研究に基づき、北海道ニセコ町のデータに対し共分散構造分析を行った。その結果、行政広報ツールは直接住民の自治体協働意識を高めることはなかったものの、間接的にコミュニティ意識の連帯・積極性因子および自己決定因子、そして社会関係資本の信頼指数(特定化信頼)を媒介することで、その意識が十分高められることが示唆された。これが本研究の提示するメディア統治モデルである。 また研究2の地域のオピニオンリーダー像については以下の通りである。まず住民の広報ツールの活用状況について言及する。ニセコ町で最も重要な情報源は広報誌で、住民全体の約72%が一定の活用を示していた。しかし次に高い活用が示されたコミュニティFMと併用しても、情報は住民全体の78.7%にしか届いてない現状が示された。行政による情報発信ではカバーできていない残りの2割がこの地域の課題である。そしてさらなる分析の結果、彼らの3割は家族や友人、近隣住民からの口コミが唯一の情報源となっていた。この地域においては、自ら行政広報ツールを活用しない住民に対して口コミが有効に機能していた。また、その口コミの発生源とも言える地域のオピニオンリーダーの解明を行ったところ、彼らは町役場が主催するイベントの町民講座に現れていた。町民講座参加者が地域の情報拡散の面で担う役割は大きく、行政は彼らを二次的な情報発信者として有効活用することが重要であることが示唆された。
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