研究課題
今年度は前年度に引き続き、超高圧下における鉄を含むブリッジマナイトの音速測定を行い、今までに報告されている数倍以上の圧力であるメガバール圧力下までの鉄を含むブリッジマナイトの弾性波速度の測定に成功した。鉄を含むブリッジマナイトは下部マントルに最も多く存在する鉱物であるが、従来の研究では鉄を含むブリッジマナイトのメガバール圧力下における音速測定は実験の困難さにより行われていなかった。本実験の音速測定結果を用い、実際の地球の地震波観測データと比較することで、下部マントルの鉱物学的モデルをより強く制約することができる。本研究では音速測定に加え、ブリッジマナイトの音速に対する鉄の効果を決めるため、透過型電子顕微鏡(TEM)- 電子エネルギー損失分光法(EELS)装置を用いた高圧高温発生装置ダイヤモンドアンビルセル(DAC)の回収試料の鉄の量および価数の測定を試みた。鉄を含むブリッジマナイトのTEM-EELS測定はバイロイト大学バイエルン地球科学研究所で行った。その結果、鉄の濃度・鉄のスピン転移によりブリッジマナイトの音速が有意に変化することが明らかになった。現在、ブリッジマナイトの鉄の濃度およびスピン転移の効果を考慮に入れた下部マントルの鉱物学的モデルを検討しており、今までのところ下部マントルは上部マントルよりもSiに富むモデルがもっともらしいということが導き出された。上部マントルよりも下部マントルがSiに富むという結果は、地球の進化過程や地球の材料物質について大きな示唆を与える。Siが下部マントルに富むことで、現在のマントル対流は、従来考えられていたような一層対流とは異なる可能性が示唆される。また、地球の材料物質については、典型的なCIコンドライトとは一致せず、地球に特有のコンドライト(たとえばEarthコンドライトなど)を考える必要があることが示唆される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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In Deep Earth: Physics and Chemistry of the Lower Mantle and Core
巻: 217 ページ: 265-275
10.1002/9781118992487.ch21