昨年度までに、神経スパイクを含む伝播現象全般を念頭に置き、ネットワーク構造とネットワーク上のダイナミクスの関係を、モデルを用いて調べてきた。今年度はイベント列のデータから伝播現象を描写するより良いモデルとより良い理解を得るために下記の研究を行った。 今年度は前年度までの研究成果をさらに発展させ、神経ネットワークだけでなく、感染症の伝播やツイートの伝播など他の種類の伝播現象も対象に研究を行った。時間変化するネットワーク上の伝播現象に対して新しい解析手法を提案した。また、Twitterなどでみられる伝播のツリーに対して、サイズや構造を表す量を計算する手法を提案し、経験データを用いて妥当性を検証した。 年度の前半は、ネットワーク上の分岐過程の専門家である、James Gleeson教授(アイルランド、リムリック大学)の研究室に滞在し、共同で研究を行う機会に恵まれた。James Gleeson 教授とは、ネットワーク上の伝播過程の経験データに基づいた理論を構築するための議論を深めることができた。 本研究の結果は、9月にPhysical Review Letters誌から論文として出版され、さらに最新の成果をまとめた論文2編を投稿予定である。また、本プロジェクトの研究成果は、イギリスで開催されたネットワーク科学の会議(CoSyDy)、および国内学会(日本物理学会)において発表した。また、今後も2018年6月のネットワーク科学最大の国際会議(NetSci 2018)に採択されており、口頭発表を行う予定である。
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