研究課題/領域番号 |
15J02047
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 俊平 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | シナプス可塑性 / 長期抑圧(LTD) / AMPA型グルタミン酸受容体 / 全反射顕微鏡 / エンドサイトーシス / エキソサイトーシス / Super Ecliptic pHluorin |
研究実績の概要 |
シナプス可塑性は記憶や学習の基盤現象と考えられている。本研究ではシナプス長期抑圧(LTD)時において、シナプス後膜周辺におけるAMPA型グルタミン酸受容体のトラフィッキングを個々の小胞レベルで明らかにすることを目指している。過去の研究によって、ガラス面上にニューレキシンをコートして全反射顕微鏡の観察領域にシナプス後膜の形成を誘導し、pH感受性蛍光タンパク質で標識したAMPA受容体を発現させることで、シナプス後部周辺の個々のエキソサイトーシスを観察することが可能になっていた(Tanaka et. al., Nature Protocols 2014)。この実験系に加え、細胞外環境を断続的・瞬間的に弱酸性条件にする操作を加えることで、これまでに個々のエンドサイトーシスを観察することを可能にした。こうしたAMPA受容体の個々のエンドサイトーシスを、エンドサイトーシス関連分子阻害剤投与下においてトランスフェリン受容体と比較したところ、定常状態においてAMPA受容体はクラスリン・ダイナミン非依存的に取り込まれることが示唆された。一方でシナプス長期抑圧(LTD)時においては、NMDA投与刺激後クラスリン・ダイナミン依存的にAMPA受容体が取り込まれた。このエンドサイトーシスの促進は一過的であった。一方で、細胞膜表面の受容体の量的変化の高精度な測定を行ったところ、AMPA受容体はゆっくり減少していることが分かった。これらの結果から、LTD誘導時にはエキソサイトーシス頻度の減少が関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LTD誘導刺激に際した各AMPA受容体サブユニットのシナプス内外での量的変化を精度よく明らかにしたこと、個々のエンドサイトーシスによりAMPA受容体が取り込まれる時間経過や空間分布を明らかにできた点は目的の達成に向けて着実な進展である。細胞膜表面の各AMPA受容体サブユニットの量的変化を、エンドサイトーシスの頻度変化のみでは十分に説明できないこともわかったので、今後はその解明を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
エンドサイトーシスの頻度変化だけではLTD誘導時における細胞膜表面の受容体の経時的、量的変化をうまく説明できないことから、エキソサイトーシスの頻度変化も記録・解析する。細胞膜表面のAMPA受容体の量的変化とエキソサイトーシス・エンドサイトーシスの頻度変化の関係を明らかにし、シナプス可塑性発現時における神経細胞内外のAMPA受容体のトラフィッキングの全体像を明らかにしていく。
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