研究課題
多くの脊椎動物の網膜には2種類の視細胞、桿体視細胞と錐体視細胞が存在するが、暗所視を担う桿体視細胞は錐体視細胞と比べて極めて高い光感度を示す。そこで本研究では、桿体視細胞に発現する視物質(ロドプシン、一部の錐体視物質)が分子進化の過程でどのようなアミノ酸残基の置換を経て、暗所視に必須な分子特性(低い熱活性化頻度)を獲得したのかを明らかにすることを目指した。昨年度までに、ロドプシンは、錐体視物質からの分子進化の過程で、E112とI189を獲得することで、低い熱活性化頻度を獲得したこと、また桿体視細胞に発現するカエル青錐体視物質や夜行性ヤモリ緑錐体視物質では、ロドプシンと同様に低い熱活性化頻度を示すことを確認していた。本年度では、最初に桿体視細胞に発現する夜行性ヤモリUV錐体視物質の熱活性化頻度を測定し、トカゲや昼行性ヤモリUV錐体視物質と比較した。その結果、夜行性ヤモリのUV錐体視物質のみが低い熱活性化頻度を示した。次に、カエル青錐体視物質、夜行性ヤモリ緑・UV錐体視物質の低い熱活性化頻度をもたらすアミノ酸残基の特定を行った。様々な動物種の青・緑・UV錐体視物質のアミノ酸配列を比較し、カエル青錐体視物質、夜行性ヤモリ緑錐体視物質、夜行性ヤモリUV錐体視物質、それぞれでのみ保存されているアミノ酸残基に対して変異体解析を行った。その結果、カエル青錐体視物質ではT47、夜行性ヤモリ緑錐体視物質ではT213、夜行性ヤモリUV錐体視物質ではY89とY172が低い熱活性化頻度に貢献していることが明らかとなった。また、測定したすべての野生型視物質およびその変異体の活性状態の安定性を測定した。その結果、発色団の熱異性化頻度と活性状態の安定性の間には強い相関があることが分かった。このことから、発色団の熱異性化頻度は、視物質の発色団周辺の構造揺らぎを反映していると考えられた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proc. Natl. Acad. Sci. USA
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