研究課題/領域番号 |
15J02056
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
杉村 尚俊 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | ウイルス / RNA / ナノ空間 |
研究実績の概要 |
近年、環状RNAはタンパク質に翻訳されずに機能するnon-coding RNAの大きなファミリーであることが明らかとなってきており、環状RNAの詳細な機能を明らかにすることは重要である。しかしながら、核酸の合成で用いられる固相合成法では、環状RNAを合成することは難しい。本研究ではこの課題を解決するために、ウイルスカプセル内部のナノ空間を核酸の環化反応場として用いることを目的とした。 当該年度は酵素を内包したウイルスカプセルの作製を重点的に行った。まず、これまで当研究室で使用していた真核生物のウイルスを用いて酵素内包ウイルスカプセルの作製を行った。目的の酵素をウイルスのカプセル内部に結合するアンカータンパク質のN末端に融合し、ウイルスのカプシドタンパク質と大腸菌内で共発現を行うことで内包を試みた。その結果、ウイルスカプセルが得られ、酵素の内包が確認された。しかしながら、収量が低く、再現性も高くなかったため、これ以上の進展は見込めないと判断しウイルスの種類を変更した。大腸菌発現系で多量に得られるバクテリオファージのウイルスカプセルを用いて同様の方法で酵素の内包を試みたところ、再現性・収量共に良い実験系の構築に成功した。現在は得られたウイルスカプセルの評価を行い、酵素活性を測定を行っている。当初の予定よりも酵素を内包したウイルスカプセルの作製に時間を要したが、より優れた実験系の構築が行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度はRNAリガーゼを内包したウイルスカプセルを安定して作製することを目指した。まず、これまで当研究室で使用していたウイルスカプシドタンパク質とアンカータンパク質-酵素融合タンパク質を大腸菌内で共発現し、酵素を内包したウイルスの作製を試みた。その結果、少量ではあるがウイルスカプセルが得られ、酵素の内包が確認できた。しかしながら、収量と再現性が良くなかったので、ウイルスの変更を行った。バクテリオファージのタンパク質で同様の方法で酵素を内包したウイルスカプセルの作製を行ったところ、収量・再現性が良い系が構築できた。現在はウイルスカプセルに内包された酵素の活性評価法の確立を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
実験に用いる材料である酵素を内包したウイルスカプセルの安定生産が可能となったので、今後は活性評価と実際にRNAの環状化を目指す。まず、これまで報告されている蛍光分子を用いたRNAリガーゼの活性評価法に従い、内包された酵素と内包されていない酵素の酵素活性の違いを評価する。酵素活性が確認されれば、1本鎖RNAの連結反応を行い、ウイルス内部ナノ空間でRNAの環化が起こるかを評価する。環化の評価は環状RNAを分解しないRNase R処理前後のアガロースゲル電気泳動パターンの差異で行う。また、カプシドタンパク質に変異を導入し、カプセルサイズやRNAが透過するポア周辺の電荷を変え、環化反応の制御を試みる予定である。
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