研究課題/領域番号 |
15J02079
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
今泉 和也 北海道大学, 文学, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 三足円筒土器 / 資料調査 / タイプ分類 / 地域性 |
研究実績の概要 |
2015年7月と2016年5月にグアテマラ共和国において資料調査を行った。対象地は国立人類学歴史学研究所(IDAEH)、国立考古学民族学博物館(MUNAE)、ティカル国立公園(PANAT)、フランシスコ・マロキン大学附属ポポル・ブフ博物館の4か所である。この二回の資料調査によって168点の三足円筒土器資料に関するデータを取得し、それまでに取得したデータと合わせて計262点のデータを取得した。 マヤ考古学では報告書が未刊行である例が多く、そのため先行研究において自らの遺跡発掘調査の成果のみを使用した研究を主としている。またマヤ地域が複数国にまたがっているために広域な研究が困難であることも一つの理由に挙げられる。広域な研究としては、「テオティワカンの影響」に関する先行研究においてタルー・タブレロ様式建造物や人物造形香炉といったテオティワカン様式遺物の有無を根拠に地域差を示す事例がある。しかしながら本研究のように、特定の資料を広く集成し、細かな属性に着目して分析を行う事例は少ない。 各施設における許可取得に予定以上の時間を要したため、平成27年度の繰り越しとして、最後の資料調査を行った。そのため資料調査終了段階では資料化作業や分類、分析の作業が行われていない。しかし「テオティワカンの影響」と国家形成の問題に取り組む上で、今後の分類と分析に必要な資料の集成を終了したことが実績である。既に予備的なタイプ分類と分析によってマヤ地域の小地域における地域性を具体的に示すことができる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象国の各施設における資料調査の許可取得に時間を要したことが一つの大きな要因である。しかし各施設及び、グアテマラ国立人類学歴史学研究所との連携を十分に図ることができたため、今後の資料調査あるいは発掘調査に関して円滑に許可が下りるような関係を築くことができた。一方で以前に取得していた土器資料データの資料化作業に予定以上の時間を要したことも要因である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度中の資料調査、及び繰り越しによる資料調査によって、計168点の三足円筒土器資料に関するデータを取得した。これによりそれ以前までに取得したデータと合わせて計262点のデータを取得した。今後はまず資料化作業を進め、各資料ごとの基本情報、写真、属性についての記述、関連する図面等で構成されるデジタルデータを作成する。 次にマヤ土器研究法であるタイプ・ヴァラエティ法が扱う器面調整と装飾技法の属性とCulvert(1993)が時期差を示すとして重要視している器形の属性の3属性と細分属性によって資料群を分類する。この作業によって得られたタイプを基に、Culvert(1993)やBraswell(2003)等の先行研究において指摘されている、マヤ産資料とテオティワカン産資料の判定や、マヤ地域内の小地域における地域差について、三足円筒土器を用いて具体的に示す。 またマヤ中部低地において、主要都市であり、一早く国家として成立したと考えられているティカルと周辺の中小都市に関して、出土する三足円筒土器の比較を行う。三足円筒土器の生産と流通に関する検討を通して、「テオティワカンの影響」下における主要都市と中小都市の間の社会的関係について考察する。
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