研究実績の概要 |
当該研究の重要な点である計算化学手法によるバーチャルライブラリー構築とこれを利用したフォーカスライブラリーの選定を行った。また効率的合成ルート構築の検討を行った。 標的タンパク質(JMJD2a)のX線結晶構造解析のデータを元にリガンドである環状ペプチド中の4残基をファーマコフォアとした。計算化学ソフトを用いて、設計したシクロプロパン型ペプチドミメティックのバーチャルライブラリーとして化合物11,664個を作成した。それぞれの化合物において側鎖の回転などの配座発生を行い、配座情報を含むライブラリーデータ(2,870,815配座)を作成した。 バーチャルスクリーニングを次のようにして行った。まずファーマコフォアに対してフィットする配座データを選出した。さらに標的タンパク質とのドッキング計算を行い、安定化エネルギー(スコア)を算出し、これに基づいて配座データを順位づけした。ここまでにヒット配座が12,052配座、化合物は1,781個に選別した。ここで実際の合成面での容易さを考慮しつつ、さらにスコア上位に当てはまる化合物に構造的特徴がないかを解析した。スコア上位1%における各シクロプロパン骨格の分布を調べると特定の骨格が集中しており、この骨格を合成することを第一選択にした。また側鎖リンカー長に着目すると4つの側鎖の内、2カ所でn-プロピル鎖を持つ化合物が多数であった。そこでこの側鎖長は固定し、残りの2つのリンカー長を3種類組み合わせた計9種の化合物を今回のフォーカスライブラリーに決定した。 フォーカスライブラリーの合成を行うことにした。本研究以前に検討していた合成ルートにおいて課題であったシクロプロパンβ位におけるアルキルエーテル化の工程を再検討した。立体的に混み合っているエステル部位を先にアルデヒドへ還元後、エーテル結合形成反応を行う経路を検討中である。
|