研究課題
本研究の目的は、低エネルギー領域の量子色力学(QCD)において現れる、クォークの閉じ込めやカイラル対称性の自発的破れなどの非摂動的現象及びその関係性に着目し、QCDの相構造を解明することである。本年度では、より詳細な研究を行い、前年度の研究を支持する結果を得た。また、符号問題に対する新しい解析方法を開発し、その妥当性を調べた。前年度までの研究では、格子上のDirac演算子として、最も簡単な離散化を行って得られる演算子を用いていたが、この演算子にはダブラーと呼ばれる格子特有の非物理的モードが含まれる。ダブラーモードを含まない格子上のDirac演算子として、overlap-Dirac演算子やdomain wall Dirac演算子が考えられる。我々は4次元と5次元の時空間におけるPolyakov loopとWilson-Dirac modeとの解析的関係式を導出することで、低Dirac modeがPolyakov loopに寄与しない事を確認した。従って、クォークの閉じ込めとカイラル対称性の自発的破れの関係は直接的な1対1対応でない事を、前年度よりも現実的なセットアップで示した。QCDの相構造を調べるために、有限温度・化学ポテンシャル領域における第一原理計算が必要である。ところが、実際のQCDのパラメータセットでは、有限化学ポテンシャルの場合の第一原理計算が困難である事が知られており、この問題は符号問題と呼ばれている。近年、符号問題を解決するための有力な手法としてLefschetz thimble法が注目されているが、thimble同士の位相の相殺は回避できないという問題がある。我々は、経路積分に寄与するthimbleが一つの場合は計算可能である事に着目し、新しい手法を開発した。この手法を、簡単な1次元振動積分に適用し、十分機能する事を確認した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Physical Review D
巻: 94 ページ: 074009, 074015
10.1103/PhysRevD.94.074009
EPJ Web Conf.
巻: 126 ページ: 04016, 04022
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