研究課題(惑星が持つ衛星-リング系の多様性:その起源と進化の理論的研究)で計画したように、本年度は、太陽系天体が持つ衛星やリングの起源解明に取り組んだ。まず、 SPH計算(流体計算)と N体計算(軌道計算)を組み合わせることで、土星、天王星、海王星が持つリング(輪)が、約38億年前に起こったと考えられる後期重爆撃期(木星や土星の軌道変化に伴って太陽系外縁天体群が、かき混ぜられ、太陽系全体に小天体(微惑星)が無数に飛び交った時期)に、巨大惑星と近接遭遇した微惑星が、巨大惑星の重力によって潮汐破壊され、リングの形成へ繋がることを示した。また、近年発見されたケンタウルス族小天体のリングは、木星や土星などに近接遭遇したケンタウルス族天体の表面が潮汐力によって引き剥がされ、破片がその周囲を回るようになることで形成されうることを世界で初めて示した。さらに、火星の衛星PhobosとDeimosの起源は長らく明らかになっていなかった。しかし、申請者を含む研究チームは、巨大衝突によって形成された破片円盤内で集積することで火星衛星が形成されうることを世界で初めて示した。
上述の、土星などの巨大惑星周りのリングの起源、および、ケンタウルス族天体のリングの起源についての研究結果は、筆頭著者として二本の査読ありの国際学術誌に投稿し掲載されている。また火星衛星の起源について取り組んだ研究は、Nature Geoscienceに共同研究者として投稿し出版されている。
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