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2016 年度 実績報告書

人工遺伝子スイッチSAHA-PIPによる心筋細胞の誘導

研究課題

研究課題/領域番号 15J02111
研究機関京都大学

研究代表者

谷口 純一  京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2018-03-31
キーワードピロールイミダゾールポリアミド / ヒト多能性幹細胞 / SOX2 / 遺伝子発現制御 / 分化誘導制御
研究実績の概要

本研究課題の目的はピロールイミダゾールポリアミドによるヒト多能性幹細胞の分化誘導制御である。平成27年度の結果から、ヒト多能性幹細胞の分化制御においては、遺伝子発現活性型のSAHA-PIPコンジュゲートよりも抑制型のヘアピンPIPが効果的であるということが示唆された。そこで本年度は、抑制型のヘアピンPIPを用いてヒトiPS細胞から心筋細胞への分化制御を検討して以下の結果を得た。
1) 転写因子SOX2は、心筋細胞誘導の第一段階である中胚葉誘導に対して抑制的に働くことが知られている。SOX2の結合DNA配列を標的とするPIPを設計・合成した。このPIPはSOX2とDNAの結合を効果的に阻害した。また、このPIPはヒトiPS細胞においてSOX2下流遺伝子群を発現変化させ、BRACHYURY陽性の中胚葉細胞を誘導した。さらに、誘導された中胚葉をWnt/β-catenin経路阻害剤で処理することで心筋細胞を得ることができた。この結果は論文として国際雑誌に投稿中である。
2) 心筋細胞誘導の第二段階である中胚葉から心筋細胞への分化においては、Wnt/β-catenin経路の抑制が必要である。Wnt/β-cateninの下流遺伝子の発現を制御する転写因子TCFの結合配列を標的とするPIPを設計・合成した。ヒトiPS細胞由来の中胚葉にこのPIPを処理することにより、TNNT2陽性心筋細胞の誘導が促進された。現在このPIPの作用機序の詳細な解析を行っている。
3) 上記の1),2)で開発した二種のPIPの段階的処理により、ヒトiPS細胞から心筋細胞を誘導することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

平成27年度は、研究開始当初に着目していたSAHA-PIPによる心筋細胞誘導が安定せず、大きな進展は無かった。平成28年度は進路を変更してPIPを新たに設計し直し、ヒト多能性幹細胞から中胚葉細胞および中胚葉細胞から心筋細胞の分化誘導にそれぞれ成功した。DNA結合性の合成化合物によるヒト多能性幹細胞の分化誘導制御は本成果が初めての例である。また研究過程において、ピロールイミダゾールポリアミドを従来型の4+4環型から6+6環型(ただし一部の環はβ-アラニンにより置換)へ伸長させた場合にその活性が大きく上昇することを見出した。この傾向は当研究室にて現在遂行中の別のプロジェクトにおいても見られ、高活性なピロールイミダゾールポリアミドへの設計指針として活かされることが考えられる。
以上の結果をもって、本研究課題は当初の計画以上に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

TCFの結合配列を標的とするPIPについては、その心筋誘導作用機序を調べるとともに、得られた心筋細胞の質が既存のプロトコルによって得られた心筋細胞のそれと比較してどうか調べる。また、PIPと既存の化合物を組み合わせて用いるなどしてより効果的な心筋細胞誘導法の確立を目指す。
これまでに得られた知見をもとに、他の分化誘導系に有効なPIPを探索する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] Cardiomyocytes Induction By DNA Sequence-Specific Synthetic Molecules2017

    • 著者名/発表者名
      谷口純一、Namasivayam Ganesh Pandian、板東俊和、杉山弘
    • 学会等名
      日本化学会第97春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学 日吉キャンパス、横浜
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-17
  • [学会発表] DNA結合性化合物Py-Imポリアミドによる幹細胞の分化誘導制御2016

    • 著者名/発表者名
      谷口純一、Namasivayam Ganesh Pandian、板東俊和、杉山弘
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜、横浜
    • 年月日
      2016-12-01 – 2016-12-01
  • [学会発表] DNA Sequence-Specific Synthetic Gene Switches For Cell Fate Control2016

    • 著者名/発表者名
      Junichi Taniguchi, Ganesh Pandian Namasivayam, Toshikazu Bando, Hiroshi Sugiyama
    • 学会等名
      The 43rd International Symposium on Nucleic Acids Chemistry
    • 発表場所
      Kumamoto University, Kuamamoto, Japan
    • 年月日
      2016-09-27 – 2016-09-27
    • 国際学会
  • [学会発表] DNA結合性化合物Py-Imポリアミドによる選択的な遺伝子発現制御2016

    • 著者名/発表者名
      谷口純一、Namasivayam Ganesh Pandian、板東俊和、杉山弘
    • 学会等名
      日本ケミカルバイオロジー学会第11回年会
    • 発表場所
      京都テルサ、京都
    • 年月日
      2016-06-15 – 2016-06-15
  • [学会発表] DNA Sequence Motif-Targeted Synthetic Molecules for Directed Differentiation of Pluripotent Stem Cells2016

    • 著者名/発表者名
      Junichi Taniguchi, Ganesh Pandian Namasivayam, Toshikazu Bando, Hiroshi Sugiyama
    • 学会等名
      Bioorganic Chemistry, Gordon Research Conference (2016)
    • 発表場所
      Proctor Academy, Andover, New Hampshire, USA
    • 年月日
      2016-06-07 – 2016-06-07
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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