研究課題
前年度(平成28年度)はヒト多能性幹細胞から中胚葉への分化を阻害する転写因子SOX2の結合DNA配列を標的としたPIPにより、中胚葉誘導と心筋細胞の分化誘導を達成した。本年度(平成29年度)はこのPIPの詳細な評価を行うとともに、中胚葉誘導プロトコルを最適化した。これらの成果は国際学術誌Nucleic Acids Researchに掲載された。一方、遺伝子活性化に関して、SAHA-PIPの遺伝子活性化能は不安定であった。この理由としてSAHA-PIPの作用がHDACの阻害による間接的なものであることが考えられ、より直接的にヒストンアセチル化を誘導する分子の開発が望まれた。そこで今年度私は、新たなヒストンアセチル化誘導分子としてBi-PIPを開発した。Bi-PIPはP300/CBP選択的なブロモドメイン阻害剤とPIPから成る分子であり、標的DNA配列へヒストンアセチル基転移酵素P300/CBPを直接リクルートすることでアセチル化を誘導すると期待された。試験管内の実験により、実際にBi-PIPが標的配列を有するヌクレオソームのヒストンをアセチル化することが明らかとなった。また、培養細胞を用いた実験により、Bi-PIPが細胞内でも配列選択的にヒストンアセチル化を誘導し、遺伝子発現を変化させることが示唆された。細胞内でP300/CBPのブロモドメインはアセチル化ヒストンを認識・結合し、近傍のヒストンを新規アセチル化することでヒストンアセチル化の伝搬へ貢献している。このことから、Bi-PIPはP300/CBPのブロモドメインに認識されうるという点で、人工ヒストンコードととらえることができ、DNA配列選択的な新規エピゲノム制御分子としての利用が期待される。この研究結果は国際学術誌Journal of the American Chemical Societyへ投稿し、受理された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of the American Chemical Society
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Nucleic Acids Research
巻: 45 ページ: 9219-9228
10.1093/nar/gkx693
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2017/170731_2.html