高密度電子流を駆動力とした原子の拡散現象であるエレクトロマイグレーション(以下EM)を用いて創製した微細構造体の応用を指向する上で、これまで原因が不明であった微細構造体屈曲現象の解明を通じた規則的形状付与技術の提案を目指し、微細構造体形状制御技術の基礎を通電実験ならびに組織分析を通じて提案することによりこれを達成した。 申請時には、微細構造体の一部が折れ曲がってしまう屈曲現象の発生を申請者自身が確認しており、これが創製時に使用する高温ヒータに起因した熱軟化による微細構造体自重の顕在化によるものだと予想していた。一方で申請者による前年度の研究で、屈曲が電流や温度といった実験因子に影響される可能性があるという手掛かりを得ていた。これを踏まえ、本年度は屈曲機構を通電実験ならびに組織分析を通じてより詳細に検討した。まず、自重と屈曲の関係を明らかにするため、自重を防ぐサンプル反転装置を自作し創製を試みることで、屈曲が自重によらないことを実験的に明らかにした。次に、走査型イオン顕微鏡や透過型電子顕微鏡ならびに走査透過型電子顕微鏡による組織分析により、異なる成長速度では形成される結晶構造が変化することを見出し、従来提唱されていない新たな屈曲モデルを成長過程と結びつけて提唱した。そして、電流量、微細構造体の成長速度ならびに形状の関係性を定量的に明らかにすることで、微細構造体の屈曲現象発生を緩和できる可能性を示唆する成果を得ることに成功し、形状制御技術の基礎を提案した。 さらに当初の研究計画から修正した研究として、表面プラズモン伝搬を利用した微細構造体の応用を試みた。上記の成果をもとに創製したAl微細構造体に対して、全反射照明蛍光顕微鏡を用いた表面プラズモン伝搬の観察を試行し、Al微細構造体の応用に資する知見を得た。
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