研究課題/領域番号 |
15J02148
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
須山 巨基 北海道大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 文化進化 / 情報伝達 / 累積的文化進化 / 言語 / 技術 / 回帰性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人間の言語と技術がいかに誕生したのか、それを認知科学、進化行動生態学、そして社会力学を通して解き明かすことである。本年度に行った研究では技術と言語の進化の背景には同じような認知、社会的メカニズムが起因していること、さらに、人間の認知的能力が文化の進化の従来あるモデルと照らしあわせた時、どれほどモデルと合致した成績を上げるかどうか検討した。最初の研究に関しては著しい成果を上げたので、現在論文としてまとめ上げている。さらに、2番目の研究に関しては現在も海外の共同研究者とともにデータを収集しているところである。 人間と他の動物を比べた時、明らかに他の動物が持っていない特徴として、人間の技術と言語が挙げられる。この両方の特徴は従来、個別に検証され、さらには個別に特有の進化を果たしたと考えられてきた。しかし、近年の研究ではこの2つの特徴を引き出す多くの要因が重なっていることが指摘され、多くの興味深い成果を上げている。その1つの要因として本研究で着目したのが、言語の回帰性 (recursion)である。回帰性とは、ある文法の中に同じ文法やことなる文法を繰り返し使うことによって様々な意味を無限大に表現できる能力をさす。この回帰性が技術にも適応できる、つまり、技術においても再帰性が見られ、かつその理由が言語進化で知られているものと同じであるか検討した。その結果、例証であるが言語と似たような回帰性が技術においても見られることが示された。 多くの文化進化の研究では、人間の情報伝達の効率性が技術やその他の文化を累積的に発展させる主軸になっていると考えられてきた。では果たして人間の情報伝達はそこまで優れているのだろうか。この問題を解決するために、海外のチームと人間の情報処理システム、特に記憶に着目して実験を行っている。この研究は現在もデータを収集しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していたよりも、早期に実験を終えることができた結果、本来秋ごろに予定していた実験を翌年度の春に行うことができる予定である。今まで行われた実験も想定していた結果が得られたため、現在論文としてまとめている。また、海外の共同研究チームと行っている研究もデータを収集しつつ次の実験案も考案されたので、それを翌年度に行うことを目標としている。
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今後の研究の推進方策 |
言語と技術が進化するための認知、社会的共通基盤を解き明かすために、様々な観点から今後も取り組むことを考えている。主な研究は特に言語の回帰性が技術においても見られるかどうか検討することにあるが、この研究とともに、他大学の研究チームと共同で異なる視点から言語と技術の誕生に迫ることも目的としている。よって今まではケンブリッジ大学の共同チームと連携して実験を行ってきたが、研究を進めていくうえでさらなる共同研究チームと言語と技術の進化を支えるもう1つの視点を検討する実験が考案された。 この研究は複数の大学が共同で行う実験で、特に社会性の解明に特化した実験になっている。言語においても技術においても、情報伝達がスムーズに行われることが鍵となり、その情報伝達の効率性を上げるのが社会性である。この社会性がどのような仕組みによって進化するか検討することができれば、よりいっそう、人間の本性とも呼ばれる言語と技術の進化に近づけられると考えている。 さらに、今年度に集められたデータを異なる観点から分析するために、情報工学や人工知能の専門家にアドバイスをもらいながら、新しい分析を行うことを目標としている。従来の社会心理学的方法では限界があり、それを克服するために様々な方法を立案したが、どれも同じ枠に収まるものに過ぎなかった。よってこの問題を克服するためにさらなる情報収集を翌年度に行うことで、より精度高い分析を目指している。
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