研究実績の概要 |
葉緑体NADH dehydrogenase-like (NDH) 複合体は光化学系I (PSI) 循環的電子伝達に関与している。被子植物においてNDHは、PSIと超複合体を形成しており、両者を繋ぐリンカータンパク質がLhca5とLhca6である。そのうちLhca6は、NDHの安定化に必須である (Peng et al., 2009)。一方、ゼニゴケは、Lhca6を有さず、NDHはPSIと超複合体を形成しない (Ueda et al., 2012)。アミノ酸配列に基づく分子系統解析より、被子植物への進化の過程で、Lhca6は、集光アンテナであるLhca2から分岐して進化したと考えられる。私は、Lhca6のリンカーとしての新しい機能を生み出す分子進化に注目し、この機能を付与するドメインの同定を試みた。シロイヌナズナLhca2-Lhca6間でドメイン交換を行ったタンパク質を発現する一連のキメラ遺伝子をシロイヌナズナlhca6変異体に導入した。得られた形質転換体において、NDH活性及び、NDH-PSI超複合体を形成出来るかを検証した。これらの結果から、Lhca6のストロマループ領域がリンカー機能を担っていることが明らかになった。さらに同領域はNDHとの相互作用に重要であることを明らかにした。 次に、リンカータンパク質のNDH-PSI超複合体中の位置を明らかにするため、lhca5変異体、lhca6変異体、major LHCIの各変異体、さらにはその三重変異体における超複合体形成と変異型複合体中に含まれるタンパク質を解析した。その結果、NDH-PSI超複合体において、Lhca5は、Lhca4の位置に置き換わって入り、またLhca6は、Lhca2の位置に置き換わって入ることにより、リンカーとして機能するモデルを提唱した。
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