研究課題/領域番号 |
15J02264
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
甲斐 亘 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 代数的サイクル / Chow群 / モジュラス / アルバネーゼ写像 / K理論 |
研究実績の概要 |
27年度は数体またはp進体上の代数多様体の代数的サイクルについて、0次元サイクルのアルバネーゼ写像、および、モジュラス付きサイクル理論に関する次のような展開があった。 まず、p進体上のアルバネーゼ写像について得られていた部分的な結果が投稿中であったが、これが受理され掲載の目処をつけることができた。それまでの過程で細かい誤りを正せたほか、問題の本質について観察を積み重ねることができた。 大域類対論からの類推により、数体上でアルバーゼ写像を調べる際に各素イデアルからの寄与をコントロールするモジュラスのような概念が有用になる可能性を見ている。折しも代数的サイクルのモジュラス付き理論という新しい動向があることがわかったのでこれをよく検討してみた。この理論は既に有限体上の高次元類対論で成果を収めている一方で、基礎理論に未整備な部分がかなりあることがわかった。私はモジュラス付き移動補題を自身でひとつ証明して、モジュラス付き高次Chow群が反変関手性などのコホモロジー的側面を持つことを明らかにした。これによりモジュラス付き代数的サイクルと相対K理論との間に関係をつけるという課題の達成がにわかに現実味を帯びる。この方面をさらに追究するとともに、アルバネーゼ写像をこのような大きな文脈に位置づけることで何らかの結果が得られないかということも考えていきたい。 モジュラス付き代数的サイクルに関する上記結果は特別な場合として十年来未解決だった問題(アフィン非特異多様体の加法的高次Chow群の反変関手性)の解決を含んでおり、著名な国際学会でも発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度にモジュラス付き代数的サイクルについて挙げた結果(移動補題と反変関手性)は、この分野全般の研究に弾みをつけうる有用な結果であると考えている。これまで掴み所のない対象である感じもあったモジュラス付きChow群の理論的・哲学的位置付けをはっきりさせ得たことでたの研究者の参入も促せるはずである。当初の目標であるアルバネーゼ写像の解析に直接どのように結びつくかが明らかにできなかった点に不満が残るものの、モジュラス付き代数的サイクルの移動補題と反変関手性の理論的重要性には疑いがない。
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今後の研究の推進方策 |
アルバネーゼ写像の大域体上での振舞いをモジュラス付き代数的サイクルを用いて解析できないか検討する。 モジュラス付きサイクルの反変関手性を基礎として、モジュラス付き高次Chow群と相対K群の比較に着手する。多様体と、その部分多様体の組に対して与えられる相対K群は代数的サイクル・モチーフ理論からもK理論からも関心の高い対象であって、この比較に何らかの結果が出せれば相対K群の研究に新たな視点と手法をもたらすことができ、価値の高い研究となることが期待できる。
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