研究課題/領域番号 |
15J02300
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今城 峻 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | Pi2への昼夜境界の効果 / 電離圏電流の重要性の確立 / 昼間側Pi2等価電流構造の解明 / 磁場モデリングによる定量的解釈 |
研究実績の概要 |
本研究は、電離圏電流による全球結合系という新たな視点に基づき、オーロラ嵐の開始に伴って磁気圏尾部で励起される地磁気脈動(Pi2地磁気脈動)の夜側高緯度から昼間側への伝播メカニズムを解明することを目的とする。まず、電離圏電流が重要な役割を果たしていることを確立するため、電離圏伝導度勾配の大きい昼夜境界付近でのPi2の変動特性を詳細に明らかにした。その結果、東西磁場の特性に顕著な変化が見られ、その変化は地方時ではなく昼夜境界からの位置関係に依存していることが統計的に示された。その成果は地球電磁気・地球惑星圏学会第138回講演会にて公表され「優秀発表者」に選出されるなど成果・発表ともに評価されている。次に等価電流分布を求め、昼間側電離圏電流系の構造を推定した。南北方向の等価電流ベクトルは午前と午後で反転しており、赤道域の等価電流を高緯度側と繋ぐような構造になった。等価電流の東西方向成分に対する南北方向成分の大きさの割合は午後側より午前側で大きく、午前午後で非対称な構造を示した。このことは昼間側で極方向に繋がる非対称な電離圏電流系の存在を示唆するものである。このような電離圏電流系の存在による説明を定量的に吟味するため、三次元電流系電流系モデルを数値的に構築し、電流系の作る地上磁場を計算した。その結果、観測で確認されていた昼夜境界、真昼付近での東西成分磁場の反転、午前午後非対称性が再現された。それぞれの電流要素の寄与を分けることにより、昼夜境界での東西成分磁場の符号反転はFACの磁場効果と南北電離圏電流の磁場効果の切り替わりによっておこることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地上磁場観測による解析の目標はすでに概ね達成したといえる。低高度衛星C/NOFSを用いて電離圏電流寄与の磁場変動を調べる予定であったが、初期の解析により、この衛星高度での背景変動による寄与に対して昼間側でのPi2磁場変動は非常に小さく検出が難しいことが分かった。そのため、重点目標を昼夜境界付近のPi2の解析と数値計算解析の充実に切り替えた。昼夜境界のPi2に関しては包括的な解析をおこない、充実した観測事実が得られた。数値計算解析は当初は電離層電流のパターンと観測の等価電流を比較するのみの予定だったが、さらに1段進み観測と直接比較可能な磁場を求めるところまで進展し、観測を説明しうる結果が得られるなど、予想を大きく上回る成果がでた。論文発表は1編投稿済みに留まったが、すでにこれまでの成果は博士論文執筆過程でまとまっており、順次投稿を行っていく準備がある。
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今後の研究の推進方策 |
昼間側Pi2特性分布の結果、数値計算結果をそれぞれ投稿論文にまとめ、Journal of Geophysical Research: Space Physicsに投稿し、来年度(28年度)中の受理を目指す。本研究で得られた結果を基に立てられたシナリオを更に強化するため、Pi2周期を持った沿磁力線電流が存在し、その特性が昼間側Pi2とも整合するかの検証をおこなう。そのためには沿磁力線電流を反映しているオーロラの光学データを用いる。アメリカ合衆国のUCLA Department of Atmospheric and Oceanic Sciencesにて、5-10月の5ヶ月間オーロラデータ解析のスキル習得とPi2周期で明滅するオーロラの解析を行うことがすでに具体的に計画されている。低高度衛星観測においてはより高度の低いCHAMP衛星や、SWARM衛星を用いて観測することで、電離層電流による磁場変化検知を行うことを検討している。
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