研究課題/領域番号 |
15J02327
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
高橋 経太 東京医科歯科大学, 医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | ビタミンC / ビタミンE / 食品化学 / 脂質代謝 |
研究実績の概要 |
申請者の最終目標は、老化による代謝異常を制御する生理活性物質の発見およびその基礎的な機能の解明である。ビタミンCとビタミンEは、それぞれ水溶性と脂溶性の抗酸化物質であり、脂質の酸化を防ぐ働きがある。またビタミンEは抗酸化に働くだけではなく、脂肪細胞においてアディポネクチンの発現を促す働きも報告されている。アディポネクチンは脂肪細胞から放出され肝臓に作用し、脂質消費を促進する方向へ働きかける。この様に、ビタミンEと脂質代謝の関係は深い。また、ビタミンCとビタミンEは、それぞれ大量投与によりマウスの最長寿命が延長したとの報告もあり、抗老化作用が期待されている。そして、ビタミンCが相互作用してビタミンEの還元状態を維持している事が報告されている。ビタミンCとEはその抗酸化能から投与実験は数多く行われているが、モデル動物が少ないためか生体内におけるビタミンCとEの相互作用に関する基礎研究は殆どない。一方申請者のグループはビタミンC欠乏モデルであるSenescence Maker Protein 30(SMP30)遺伝子破壊(KO)マウスに加え、家族性ビタミンE欠乏症モデルであるα-Tocopherol Transfer Protein(αTTP)-KOマウスを保有している。そこで、その二系統のマウスをかけ合わせてできるSMP30/αTTPダブルノックアウトマウスを作製し、独自のビタミンCとEの欠乏モデルの解析を行うことにした。そしてビタミンCおよびEとの関連が深い脂質代謝に焦点を合わせる事で、老化による代謝異常の基礎的な解明へ繋がるのではないかと考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はマウスの繁殖および解剖を行った。さらに、血中および肝臓におけるビタミンCとビタミンEの定量を行った。その結果、ビタミンE欠乏食を与えたマウスでは血中及び肝臓のビタミンEレベルがほとんど欠乏状態になることが分かった。また、脂質解析を行った結果、ビタミンEを与えたSMP30/αTTPダブルノックアウトマウスにおいて、肝臓脂質量が高くなることが分かった。得られた結果のより詳細な解析をこれから行う予定である。また、これらの成果の一部をシンポジストとして日本心理学会第79回大会で発表した。また申請者はビタミンE代謝の加齢変化の研究を以前から進めており、本年度はその成果の発表を国内の学会で行い、European Journal of Nutritionへ論文が受理された。以上の事から、申請者は熱心に研究に取り組んでおり、研究は概ね期待通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は生化学的検査および分子生物学的解析を行い、さらにデータのまとめと論文執筆を行う。まず、過酸化脂質の評価を肝臓および血漿、脂肪組織で行う。さらに肝臓および脂肪組織における、脂質代謝に関する遺伝子の発現量解析を、定量的Real-time PCR法で行う。また、肝臓および脂肪組織における、脂質代謝に関するタンパク質の解析をウェスタンブロッティング法で行う。 1.過酸化脂質のしひょうであるMDAおよび4HNEの定量を行う。 2.血中のアディポネクチン、酸化HDLおよび酸化LDLをELIZA法で定量する。 3.肝臓および脂肪細胞における、アディポネクチンおよびアディポネクチンレセプターを含む脂質代謝に関する遺伝子の発現量解析を、定量的Real-time PCR法で行う。 4.肝臓および脂肪細胞における、脂質代謝に関するタンパク質の解析をウェスタンブロッティング法で行う。 5.これまでに得られた結果をまとめ、成果を学術雑誌へ投稿する。
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