ビタミンC(VC)とビタミンE(VE)は、抗酸化物質であり、脂質の酸化を防ぐ働きがある。またVEは抗酸化に働くだけではなく、脂質の酸化や代謝と関連することが知られている。一方で、VCがVEと相互作用してVEの還元状態を維持している事がこれまでの研究で知られていた。しかし、その相互作用の生体内における役割は殆どわかっていない。そこでVC欠乏モデルであるSMP30遺伝子破壊(KO)マウスと、家族性VE欠乏症モデルであるαTTP-KOマウスを用いた詳細な解析を行う事にした。即ち、その二系統のマウスをかけ合わせてできるSMP30/αTTPダブルノックアウト(DKO)マウスを作製し、独自のVCとVEの欠乏モデルの解析を行うことにした。まず初めに寿命を解析したところ、VCとVEを両方不足させた時だけ、寿命が著しく低下することが分かった。老化と関連するホルモンを調べた結果、血中アディポネクチンがVCとVEを欠乏させた時に減少することが分かった。アディポネクチンは脂肪組織から放出されるため、精巣上体周囲脂肪の解析を行った。その結果、脂肪組織における遊離脂肪酸、コレステロール、リン脂質量がVEを欠乏させた時に増加し、炎症性の遺伝子発現も増加することが分かった。さらに血中の遊離脂肪酸およびLDLトリグリセリドがVCを欠乏させた時に減少していた。また、肝臓における遊離脂肪酸、トリグリセリド、コレステロールがVEを欠乏させた時に減少し、リン脂質がVCを欠乏させた時に減少することがわかり、それを補うような脂質合成に働く転写因子SREBF-1遺伝子の発現がVCとVEを欠乏させた時に増加することが確認された。本研究より、VCとVEの欠乏は脂肪組織における炎症反応を誘起する事、血中アディポネクチンを減少させる事、そして肝臓における脂質代謝に影響を与える事が分かった。
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