研究課題/領域番号 |
15J02336
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 貴之 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(DC2) (30783823)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | ナトリウム電池 / イオン液体 / 負極材料 |
研究実績の概要 |
本年度は、負極材料としてスズおよびハードカーボン(HC)に着目して検討を行った。 スズに関しては、可逆容量の向上を目指して粉末スズおよびポリアミドイミドバインダーを用いた合剤電極を作製し、Na[FSA]-K[FSA]無機イオン液体中における充放電特性を調べた。初期検討の結果、500 mAh g-1程度の可逆容量が安定して得られた。 ハードカーボンに関しては、これまでにNa[FSA]-[C3C1pyrr][FSA] (x(Na[FSA]) = 0.10 or 0.20)イオン液体中において、良好な充放電特性を示すことが分かっていた。本研究においては、さらに高いNa+イオン濃度のイオン液体を用いて、ハードカーボン負極の性能向上を目指した。初期検討として、ハードカーボン粉末およびポリアミドイミド(PAI)バインダーを用いた合剤電極を作製し、Na[FSA]-[C3C1pyrr][FSA] (x(Na[FSA]) = 0.20 or 0.50)イオン液体中において充放電特性を調べた。その結果、90-110℃の温度領域において、x(Na[FSA]) = 0.50のイオン液体の方が、明らかに高い性能を示すことが分かった。また、バインダーをPAIからCMC-SBRに変更したところ、PAIと同等の可逆容量が得られただけでなく、PAI使用時よりも初期不可逆容量が減少した。 最後に、既に良好な充放電特性を示すことが分かっているNaCrO2正極と、ハードカーボン負極の組み合わせで、HC/Na[FSA]-[C3C1pyrr][FSA]/NaCrO2フルセルを作製し、その充放電特性を評価した。60-80℃の中温領域における検討の結果、フルセルにおいてもx(Na[FSA]) = 0.50のイオン液体の方が高い性能を示すことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スズ負極については、粉末スズおよびポリアミドイミドバインダーを用いた合剤電極がイオン液体電解質中でも比較的高い容量と良好なサイクル特性を示し、今後の更なる最適化が期待される。また、ハードカーボン負極については、Na+イオン濃度の高いイオン液体を用いることで性能が向上し、期待通りの結果が得られた。さらに、CMC-SBRバインダーの利用による不可逆容量の低減に成功し、NaCrO2正極との組み合わせによるフルセル性能の向上に繋がる成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、スズ負極の検討を継続し、Na[FSA]-[C3C1pyrr][FSA]イオン液体電解質や他のスズ系負極の組み合わせを検討する予定である。また、ハードカーボン負極については、HC/NaCrO2フルセルの作動を確認できたため、次年度はサイクル特性およびレート特性について更なる評価を行うとともに、フルセル性能を決定する因子について詳細な検討を行う予定である。
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