研究課題
再生医療の分野では、iPS細胞などの多様性幹細胞から目的の臓器細胞へと分化誘導を行う試みが行われており、必要な、あるいは不要な細胞を分離する技術が細胞移植や再生医療の分野において強く求められている。そこで、本研究では、所属研究室で開発した電気化学的原理に基づいた電位印加によって培養表面から細胞を素早く脱離する技術を応用し、選択的な細胞分離法の確立に取り組んだ。本研究では、細胞選択性のあるアプタマー分子を金表面に修飾することで、必要な細胞のみをトラップし、必要なタイミングでリリースできる機構の開発に取り組んだ。具体的には、自己組織化オリゴペプチドとアプタマーを設計し、ターゲット細胞を選択的に接着させ、脱離させることができることを示した。さらに複数回繰り返すことで、ターゲット細胞を濃縮できる可能性を示した。また、3ヶ月間のイタリアでの研究留学で学んだ、分子動力学計算を細胞分離表面の設計に取り入れることで、より分離効率を向上させることを見出した。これらの成果を国内・国際会議での発表や、査読付き論文誌への掲載が決定するなど、一定の成果を挙げたといえる。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度は、細胞集団の中からターゲット細胞を分離・濃縮し、さらに非侵襲的に脱離・回収する基盤技術の確立に取り組んだ。これらの成果をまとめ査読付き論文誌への掲載や国内・国際会議での発表を行うなど、一定の成果を挙げたといえる。さらに、共著論文として2報を査読付き論文誌への掲載が決定した。以上の業績から、当初の計画以上に進展していると考えている。
イタリアでの研究留学で学んだ分子動力学計算の手法を応用し、さらに効率的な細胞分離基板の開発に取り組む。アプタマーの代わりに抗体を用いることで、立体的な肝組織を作製するために必要な大量の細胞を一度にトラップできる機構を目指す。表面に接着させた細胞を数日間培養することで、目的の細胞数にまで増殖させる。その後、表面に電位を印加することで非侵襲的に細胞を金表面から回収する。すでに予備検討を実施しており、最終年度終了までに査読付きの国際誌に研究成果を投稿する予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (2件)
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